安全基準の厳しい鉄道会社で採用される アスベスト粉塵飛散防止処理技術 チヨダKAC工法

 

                                               千代田レイヤー株式会社   

 

 

 

   インフラの塗装、防錆、アスベスト除去を手掛ける

 

  兵庫県姫路市の千代田レイヤー株式会社は、1942年の創業以来80年以上にわたり、鉄道施設を中心に高速道路、橋梁、送電塔・電波塔などのインフラ施設の鋼構造物の塗装工事・防錆塗装、アスベスト除去工事を手掛けてきた。近年では、駅舎や駅ビルなどの建築工事、コンクリート補修工事などにも事業を拡大している。

通信会社の基地局や西日本高速道路(NEXCO西日本)の工事など関西を中心に全国に数多くの施工実績があり、安全かつ正確な施工が高く評価されている。

また品質管理や環境マネジメントにも力を入れ、ISO 9001、ISO 14001さらに労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格、ISO45001を認証取得している。

 

 

 

 

 

 

   すべての解体・改修工事でアスベスト事前調査が義務化

 

アスベスト繊維を吸引することによって石綿肺、肺がん、悪性中皮腫などの疾患を発症することが知られている。1975年に原則アスベストの使用が禁止になったが、それ以前につくられた建築物や構造物には、吹付けアスベストをはじめ、内装の天井材や床材、外壁材などさまざまな部位や建材にアスベストが使用されており、その除去が社会課題となっている。

 

アスベスト除去については、労働安全衛生法、石綿障害予防規則、じん肺法、作業環境測定法、作業環境評価基準法、大気汚染防止法、廃棄物の処理および清掃に関する法律などのさまざまな法令により、管理体制や作業工程、環境測定、安全管理などが厳格に定められている。

2021年4月から改正大気汚染防止法が施行され、規制がより強化された。罰則の強化や対象も拡大され、元請け会社だけでなく、下請会社にも作業基準遵守義務が適用されるようになった。さらに2023年10月からは、解体工事に関わるアスベストの事前調査は、「建築物アスベスト含有建材調査者」の資格者が実施することが義務付けられた。

 

 

 

 

 

 

   安全にアスベストを除去する独自技術「チヨダKAC工法」

 

 同社では、11年ほど前から鉄道会社の施設を中心にアスベスト除去工事を実施している。同社がこれまでの技術やノウハウを生かして開発したアスベスト除去工法「チヨダKAC工法」は、アスベストを飛散させずに安全に工事をする独自の工法。作業区域に隣接する部分の空気1ℓ中の繊維状粒子(アスベスト繊維を含む)の本数を可能な限り抑制し、およそ10本以下にすることができる。

労働安全衛生法や大気汚染防止法などの関連法令の遵守はもちろん、安全に施工を行うために責任体制や各工程の作業手順、確認方法などを詳細に定めている。さらに事前にリスクを想定し、その対応もしっかり行っている。「チヨダKAC工法」は、厳しい審査基準をクリアして、日本建築センターの建設技術審査証明を取得している。

 

 

■「チヨダKAC工法」施工手順

 

⑴ 粉じん飛散抑制剤の散布
①石綿含有吹付け材の湿潤化
  除去の際、石綿粉じんの飛散を抑制するため、粉じん飛散制剤を散布する。粉じん飛散抑制剤は、石綿層内に短時間で浸透し、飛散抑制に効果が大きい。
②散布方法
  エアレススプレー方式で最大吐出量4.3L/ 分以上、最大吐出圧力22MPa 以上の電動の装置を用いる。

 

天井に粉じん飛散抑制剤をたっぷりかける

 

 

⑵ 石綿の除去
①除去作業
  石綿の除去にあたっては、湿潤剤が不十分な所は粉じん飛散抑制剤により湿潤化する。除去作業開始後、速やかに、粉じんを迅速に測定できる機器(吸引ポンプ式デジタル粉じん計)を用いて排気ダクト内の粉じんを直接測定することにより、集じん・廃棄装置の排気口から漏えいがないことを確認する。
②石綿含有吹付け材のケレン棒等による除去
  粉じん飛散抑制剤の散布後にその浸透効果を確認し、スクレパー棒等により石綿含有吹付け材を掻き落とす。掻き落とした石綿含有吹付け材は除去物及び汚染物の処理等に従い処理をする。

   

粉じん飛散抑制剤をかけながらけずり取る    粉じん飛散抑制剤をかけながらワイヤーブラシ

 

 

⑶ 除去した面への粉じん飛散防止処理剤の散布
①除去した面への表面安定化処理
  除去作業が終わり、作業区域の清掃が終了したら、目視により除去が十分に行われたことを確認後、粉じん飛散防止処理剤を吹き付ける。
⑷ 養生シートへの粉じん飛散防止処理剤の散布
①隔離シート面への飛散防止処理
  隔離シートに付着した石綿粉じんの飛散を防止するために、隔離シート全体に飛散防止処理剤を散布する。

 

  

粉じん飛散防止処理剤をたっぷり吹付ける     隔離シート(プラスチックシート)に散布

 

 

 

 

   新大阪駅や京都駅などでアスベスト除去工事を実施

 

 同社では、チヨダKAC工法により、新大阪駅や京都駅構内の屋根裏、阪急電鉄の車両工場や車庫の屋根裏などのアスベスト除去工事を実施し、鉄道会社や元請け会社との信頼関係を築いていった。

5年間をかけて実施した新大阪駅のアスベスト除去工事では、綿密な計画のもと工事エリアを明確に区分し、細心の注意を払い、一つひとつの工程を確実に実施した。鉄道施設の工事では、壁を1枚隔ててその向こう側には多くの人が通行している。新大阪駅のように大きな駅では1日何万人もの人が往来する。その中で工事をするには徹底した安全管理が必要になる。「チヨダKAC工法」は、安全基準の厳しい鉄道会社に採用される信頼性の高い技術だといえる。

 

  阪急電鉄

 

 

   高い専門性と信頼性

 

 アスベストが使われている建物や構造物が老朽化し更新時期を迎えている。アスベストを安全に除去する技術は、ますます重要になっている。これまでは、解体工事会社の中には十分な専門知識がないまま、手順を踏まずに解体作業を進めてしまい、アスベストの存在が明らかになり、工事がストップするケースも見受けられた。しかし、専門知識を持つ調査員による事前調査が義務付けられたことでこのような事態もなくなっていくことだろう。一方で、元請け会社も下請け会社も法令に関する深い知識が必要になる。厳格な管理が求められるアスベスト除去工事を行う施工会社の確保もむずかしくなってきているという。

同社には、現在、3名の建築物アスベスト含有建材調査者の有資格者がいるが、今後は、解体・改修工事の事前調査にも対応するため資格取得者を増やしていく計画だ。これからもアスベスト除去技術のさらなる向上と安全安心の精神で取り組み、アスベスト除去という社会課題を解決しながら、作業スタッフの健康はもちろん、施主や利用者の安全、ひいては空気環境の保全に貢献していきたいという。