2019.08.05

Vol.12 三井共同建設コンサルタント株式会社

 

グループ力を活かしていち早く海外に進出


 

 

 

 

 

  

 

 

 

 建設コンサルタントは、1960年代に欧米では事業を展開していたが、これに匹敵する業務を担当するような会社は国内にはなかったため、国などの発注機関が直轄で対応していた。

 

しかし、高度経済成長に伴って業務量が増大し、そこで国内でも発注者の業務を支援する建設コンサルタントが相次いで設立された。

 

三井共同建設コンサルタント株式会社も同時期に設立されたが、当初から海外市場を見据えていた点が他社とは一線を画していたといえる。

 

はじめは国内で技術基盤を築き、その実績を積み重ねた後に海外進出をめざす企業が多い中で着眼点が違っていた。

 

 

 

   三井グループの20社が共同出資

 

 1965年設立。三井不動産や三井物産など社名が示すように三井グループ20社が共同出資した。

 

海外の動向や国内の状況を見据え、グループ内にも建設コンサルタントが必要であるとの想いからだった。

 

国内では、道路、橋梁、河川、港湾などをまず主な業務の対象とした。

 

建設コンサルタントにとっては、技術者が資本である。入社1,2年では戦力にならない。グループ各社から関連技術者が結集し対応した。これが、設立当初から各分野にわたり事業展開をできたグループ企業の強みでもあった。

 

設立当初は役員を含め8人の陣容だったが、国内では「いざなぎ景気」を背景に建設省や運輸省(いずれも現 国土交通省)、日本道路公団(現 NEXCO)などからの受注が増加する一方で、海外でも三井物産によってインド、コロンビア、タイ、ペルー、フィリピン、スリランカなどでの業務を展開することができた。

 

総合建設コンサルタントは、国内での業務が減少したため海外進出したり、海外ならではのリスクに苦戦しているケースもある。設立当初から海外へ進出できたのもグループ企業の強みといえよう。

 

 

 

   急成長した草創期

 

体制づくりと職員増強によって設立からわずか4年4ヵ月後の1969年には約100人になった。

 

売上高も国内では建設省からの大型受注に加えて、海外ではブラジル、韓国、インドネシア、タンザニア、ザイールなど南米、アジア、アフリカといった広範囲の国々から大型の業務を受注し、業績は拡大。受注高は1970年度の5億5,000万円からわずか3年後の1973年度には12億9,000万円と2倍以上に増加し、さらに1978年度には24億3,000万円へと早くも草創期に急増を続けた。

 

時代は昭和から平成へと移り変わり、バブル経済の発生と崩壊といったうねりのなかでさらに成長する発展期を迎えることになる。

 

バブル経済崩壊後は、景気浮揚策として公共投資が増大されたことなどが追い風となり、1995年度には受注高が100億円に達し、社員も急増した。

 

その後、財政構造改革に迫られた政府が、公共投資抑制に舵を切った影響も受けたが、受注減少に苦闘した激動期を経て、再び成長に向けて歩んできた。

 

経営改善改革や中期経営計画の策定を繰り返し、「建設に係わる調査・計画・設計など既存領域の堅持と周辺分野への拡大」に向け「社員のチャレンジ精神を喚起」し続けてきた。

 

創立50周年を迎えた2015年には、さらなる飛躍をめざし、本社事務所を高田馬場からゲートシティ大崎に移転。

 

設立当時からめざしてきた「専門的な知識と高度な技術、該博な見識を持つ、強力にして秀抜なる建設コンサルタント」を標榜して100年企業へと挑戦をし続けている。

 

 

 

   全国の重要港湾以上の9割を担当する

 

創立からの足跡を概観したが、時代の荒波を受けながらも着実に総合建設コンサルタントへと成長してきた。

 

現在では従業員も430人余りを数え、建設コンサルタントとしての登録は14部門に及ぶ。

 

分野別の売上では、河川・砂防が約40%を占め、次いで道路・橋梁が約25%、港湾・空港の約15%と続く。

 

売上の4割を占める河川分野では、河道などの調査・計画・設計業務から水循環の再生についての検討、災害に備えたハザードマップ作成や洪水予測システムなど広範囲に及ぶ。

 

道路・橋梁分野は、設計業務のほか、維持管理や点検・補修などの業務が増加している。

 

港湾分野は、全国に約120ある重要港湾以上の9割を担当してきた実績がある。創業当初から強みを発揮してきた分野でもある。

 

このほか、地震や火山噴火など大規模自然災害に備えた防災計画の作成業務が伸びてきている。

 

 

 

   各分野にわたり優良表彰を受賞

 

技術力を問われる建設コンサルタントとして、発注者から優良業務として表彰された実績も数多い(2014~2018年度の国土交通省地方整備局の局長表彰21件、事務所長表彰42件)。

 

例えば2018年度の局長表彰業務を紹介すると、道路関連では三陸沿岸道路事業監理業務が挙げられる。東日本大震災からの復興に向けたリーディングプロジェクトとして進められている三陸沿岸道路の吉浜釜石道路と東北横断自動車道釜石秋田線の釜石道路の20kmを対象にしたものだった。

 

官民がパートナーを組み、早期完成に向けて事業の進捗状況を常に把握すると同時に設計・用地・施工についての情報共有によって工程の遅れを回避し、コスト縮減も実現した。

 

東関東自動車道水戸線の橋梁詳細設計業務では、対象となった本線を跨ぐ4つの跨道橋について、路線全体の構造特性や形式を整理し、LCC(ライフサイクルコスト)に優れるコンポ橋やPC中空床版橋を提案。

 

施工計画では、CIMを活用した3D施工ステップ図を用いて検証するなど初期段階から課題の解決に向けた具体的な実施方針を整理し、発注者とも綿密に連携して業務を進めた点などが評価された。

 

 

東関道水戸線橋梁詳細設計業務(国土交通省 関東地方整備局長表彰)

 

 

 

河川関係では、最上川堤防の質的整備外測量設計業務がある。水制についての詳細設計とさみだれ大堰と呼ばれる施設の維持管理について検討したもので、堤防の質的整備については最新の技術基準や堤防の浸透照査の再評価を踏まえて提案。大堰は、概略設計を実施したうえで、今後の維持管理方法や長寿命化計画の方向性を検討した。

 

従来の成果にとらわれることなく、限られた期間内で対応したことが表彰につながった。

 

九州北部豪雨で被災した筑後川の測量、設計業務では、筑後川河川事務所管内の全被災箇所について復旧に向けた申請書類に加え、護岸の詳細設計を単独で受注した。

 

甚大な被害を受けた緊急復旧箇所もあり、次の出水期までには整備が必須とされるなど多くの課題に対して確実でいち早く施工計画や護岸形式を選択。

 

発注者の各部門からの複数の緊急要請に対しても期限を厳守し技術面での品質を確保したことなどが評価された。

 

これらの成果を支えているのが、創業以来蓄積してきた技術力に他ならない。各分野にわたって継続的に開発に取り組み、その結果は「Technology Report」としてまとめ、具体的な内容を掲載している。

 

 

     

Technology Report

 

 

 

国内で事業分野を拡大してきた一方で、海外にもグループ力を活かすなどして進出しており、人材を育成し、技術にさらに磨きをかけ、国内外にわたって活躍の舞台は広がっている。

 

                               (2019年8月時点)