2019.05.23

Vol.9  株式会社 建設環境研究所

 

将来を見据えた創業理念


 

 

 

 

 

 

 

 

地球温暖化に代表される世界的規模での環境問題。

 

わが国では、これに起因するとみられる局所的集中豪雨が毎年のように発生し、台風も大型化する傾向にある。さらに、地震や火山噴火など自然災害の発生が常に懸念されている。

 

建設コンサルタントにも、こうした状況への対応が求められており、環境対策の重要性は増すばかりである。

 

創業当初から環境問題に着目し事業を展開してきたのが、株式会社建設環境研究所である。社名が物語るように「環境に強い総合コンサルタント」を標榜しており、国土交通省における建設環境分野でトップシェアを誇っている。

 

 

 

   環境アセスメントなどの動向を先取りする

 

創業は1983年。当時は、大規模プロジェクトをはじめ全国各地で新規の建設事業が展開されていたが、現在ほど環境問題に対する機運や関心も高くはなかったのが実情といえよう。

 

1984年の閣議決定や行政措置などによって、国の事業を中心に環境アセスメントは行われていた。地方自治体でも要綱などを定めて実施はしていたが、今後はさらに、建設事業にとって環境が重要なテーマになると見据えて、社名を建設環境研究所とした。

 

1997年には、環境影響評価法(通称:環境アセスメント法)が制定され、評価する環境要素の拡大や事後調査の義務付けなどを含めた環境影響評価制度が定められていった。また、2002年には自然再生推進法、2004年には特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称:外来生物法)が制定されるなど、これらの一連の動きを先取りした同社には「先見の明」があったといえよう。

 

市場が拡大するとともに、環境調査やアセスメント手続の経験を積み上げ、建設環境分野の多種多様なノウハウ、実績、技術力、人材を確保し、「環境のことなら建設環境研究所」という唯一無二のブランドイメージを構築してきた。

 

その後も、事業分野は拡大を続け、現在では、河川・ダム・砂防、道路・交通、防災、都市・地域、環境、環境計量と幅広い。中でも環境、河川、道路の3部門を中心に展開している。

 

一口に環境といっても、その分野は多岐にわたり、建設事業全般に関係する。創業当初から環境問題に取り組んできたことによる技術やデータの蓄積、さらに組織体制や専門技術者を含めた強みが同社にはある。

 

 

 

2018年7月豪雨

岡山県小田川の浸水氾濫区域での状況記録

(対象区域内の医療機関)

解析結果

(7月8日午後12時50分の結果)

 

 

 

徳島県吉野川水系の土砂災害現場調査

ドローンによる被災状況調査

 

 

 

岡山県真備町でのGPSによる浸水深測定状況

浸水深測定状況

 

 

 

自然環境の調査については、全国の河川・ダム、道路などで実施してきており、これらの情報は、各インフラ整備の前提条件として活用されている。

 

環境アセスメントや環境計画については、全国の主要なプロジェクトに参加し、その実績は高く評価されている。国土交通省などからの優良業務表彰の実績がそれを物語る。

 

 

 

   水を採取するだけで -環境DNA解析技術-

 

環境分野においても技術革新は目覚ましい。例えば、注目されてきているのが環境DNAと呼ばれるものである。川や海の水を解析すれば、そこに生息する生物が分かるというものだ。分泌される体液やうろこ、排せつ物等からDNAを検出し、それを分析することで生物の種を特定できる。この解析技術の開発にも積極的に取り組んでいる。

 

 

 

生物分析・DNA分析

 

 

 

現地での作業は、水を採取するだけなので大規模かつ連続的な調査の必要はない。法的な申請も不要である。

 

大別して2つの解析手法がある。一つは採取したDNAを解析して生息する種を網羅的に明らかにするもの。

 

もう一つは、分析対象種を事前に決めておき、その種が生息しているかどうかを検出するものである。対象種は、魚類のほか両生類、哺乳類、植物なども含む。自社で分析機器を備え、現地でのサンプリングから解析まで全工程に対応する。

 

技術開発の対象は新規の開発プロジェクトだけではない。既存のダム湖でのアオコやカビ臭発生のメカニズムの特定やダム湖内の水の流動を解析するシミュレーション技術は、発生を抑制する曝気運用方法の提案に結びついている。

 

 

 

アオコ等発生状況の可視化システムの動作例

 

 

 

   環境アセスメントの迅速化手法も開発

 

培ってきた環境技術と蓄積したノウハウは、今後のさらなる展開が予想されている再生可能エネルギーの開発にも活かされている。地球温暖化対策の推進に寄与する風力発電や地熱発電、太陽光発電などである。クリーンなエネルギー源ではあるが、建設に伴って環境への影響があってはならない。環境アセスメントから事業性の調査、地域との共生まで幅広く対応している。

 

特に環境アセスメントについては、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)から受託した「環境アセスメント前倒データベース化事業」の実績が生かされている。

 

環境アセスメントの手続期間を短縮する多数の実証事業を対象に、環境アセスメントの実施実態を分析したもので、その成果は「環境アセスメント迅速化手法のガイド」としてNEDOのホームページで公表されている。

 

また、環境アセスメントに要する期間が長期間に及ぶことの多い事業の早期供用開始へ向けてのアドバイスも行っている。

 

地熱発電所の場合は、山間部に建設される場合が多く、生息する鳥類や魚類、植物、水質、景観などを含めた環境への影響を予測する必要がある。発電所からは硫化水素が水蒸気とともに排出されるため、予測して評価する必要もある。いずれも、専門性の高い分野であり、対応できる人材が揃っているのも同社の強みである。

 

これらは、短期間で構築できるものではない。創業以来の積み重ねによるものであり、インフラ整備に係る環境分野では他社の追随を許さない大きな要因であり、財産ともいえよう。

 

洋上風力発電所では、事業性調査から環境アセスメントまでワンストップでサポートする。合意形成に時間が掛かることの多い漁業協同組合など地元交渉も、これまで取り組んできた実績に基づく信頼関係も良好であり、スムーズに進めることができる。

 

 

 

   環境を軸に拡大する事業分野

 

また総合コンサルタントとして、河川関連では樋門・樋管等の点検結果をデータベース化し、これをもとにコンクリートの表面と内部の劣化の関連性を分析して、健全度評価を見直し、ひび割れ補修に関するマニュアル(案)を作成している。

 

ダムについては、堤体本体のほか、周辺の法面、漏水量、揚圧力などの変状データから安全性を確認すると同時に長寿命化の方針を示した堤体の健全度評価と維持管理方針なども作成している。

 

道路では、利用者との共存を図る道路空間の再配分として、自転車の利用環境向上に向けた整備計画を検討したほか、案内標識の適正化や国際化に対応した表記方法、デザインについての業務も実施してきた。

 

防災関連では、大規模津波を想定した道路管理のタイムライン(防災行動計画)を作成するためのガイドラインをまとめている。地震などの災害によって寸断された陸上交通を補完するため、東京湾臨海部の水上輸送基地の整備を検討し、基地運用のマニュアル(案)も作成した。

 

これらは、同社が手掛けてきた業務の一部に過ぎず、業務範囲はさらに広範囲に及ぶ。これを支えているのが、各専門分野に精通した豊富な人材である。

 

新人教育にはじまり、講習会や勉強会を実施。新技術や優良業務の発表会も年に1回開いている。

 

 

 

新人研修

 

 

 

勉強会

 

 

 

また、働きやすい職場づくり、働き方改革の対応として、子育て支援、在宅勤務制度、休暇取得推奨日制度、ノー残業デー、退社時間表明カード、健康推進への各種取組みなど、ワークライフバランスを支援する仕組みも充実している。

 

技術士の取得など社員のキャリアアップのための支援制度もある。技術力向上のための研鑽に加えて、新技術開発、先端技術の取り込みにも積極的であり、環境を主体としながら活躍の分野は拡大する一方である。

 

                                (2019年5月時点)