2019.06.12

Vol.10 基礎地盤コンサルタンツ株式会社

 

得意分野で成長して分野別では国内トップに


 

 

 

 

 

  

 

 

 

 土木、建築を問わず、建設構造物を支える要となる地盤と基礎。

 

特にわが国は地盤が脆弱な地帯が多く、地震や台風、豪雨などの自然災害が毎年のように発生している。

 

設立当初から地盤と基礎の重要性に着目し、この分野ではトップの業績を上げているのが基礎地盤コンサルタンツ株式会社である。

 

総合コンサルタントとして事業分野を拡大すると同時に海外へも積極的に進出し、シンガポールを中心にした東南アジアでは、高い評価を受けている。

 

 

 

   地盤に強い総合コンサルタント

 

 設立は1953年。地盤調査会社としてスタートした。創業者が着目したのは、欧米ではコンサルタント業務の中でも最もステータスの高い分野であることだった。

 

これに対してわが国では、コンサルタント業務の一分野に過ぎない。「欧米と肩を並べるコンサルタントへ」との強い意志を込めての旗揚げだった。

 

地盤を的確に把握すれば、将来にわたって構造物に問題が発生することはない。リスクを評価することによって、事故は予防できるとの信念があったという。

 

当初の社名は「土質調査所」であった。手作りの土質試験機などを用いて、わが国初の土質試験についての実務を開始した。

 

これを皮切りに地盤調査業界のリーディングカンパニーとして、機器の開発や導入、調査、試験方法の構築に指導的な役割を果たしてきた。

 

 

業務の流れ

    

① 計画の確認        ② 現地確認         ③ 地盤調査

 

 

    

④ 解析           ⑤ 設計

 

 

 

ホームページのトップには、「地盤に強い総合コンサルタント」と謳っている。

 

1964年に現在の社名に変更。業務の多様化も進み文字通り総合化してきているが、原点である地盤が本丸であることだけは忘れず、ここでの強みを活かして成長をしていく方針に揺るぎはない。

 

 

 

   国内の主要プロジェクトを相次いで受注

 

若戸大橋土質調査(1957年)

東海道新幹線地質調査(1959年)

 

 

 

東京ディズニーランド地盤調査(1978年)

明石海峡地質調査(1987年)

 

 

 

実績を振り返ると創業当時の若戸大橋をはじめ、東海道新幹線、第二関門橋、東京ディズニーランド、神戸市の人工島であるポートアイランド、明石海峡大橋、神戸空港など国内の主要プロジェクトを相次いで手掛けてきた。

 

具体例を挙げていけば枚挙に暇がないほどである。これを支えてきたのが、設立当初からの技術の研鑽である。

 

海外からの導入にも積極に取り組んできている。フランスのメナール社との技術提携によって、プレシオメーターと呼ぶ機器を導入して、国内で初めて孔内水平載荷試験を実用化した。杭基礎などの設計法の制定に貢献した。

 

アメリカからは、地震時の液状化の発生を予測する土質試験である繰り返し三軸試験を導入した。現在では国内でも一般的になっているが、民間では初めてだった。

 

地震発生時の加速度や変位などの地盤の挙動を予測するコンピューターソフトもアメリカから導入した。耐震設計の先駆けとなった技術である。

 

自社で開発を重ねたり、海外から導入したりして蓄積した技術は、実際のプロジェクトでの成果に結びついている。

 

例えば1978年に液状化対策についての地盤改良のための調査を受注した東京ディズニーランドである。同様の埋め立て地がある千葉県浦安市内では、2011年の東日本大震災によって建物や道路、下水道などのライフラインが液状化現象による大きな被害を受けたが、ディズニーランドの施設はほとんど被害が発生しなかった。

 

1987年の明石海峡大橋の基礎地盤調査では、大水深での直径300mmの砂礫層のサンプリングに国内で初めて成功した。この調査結果によって、基礎底面を10m浅くすることが可能になり、大幅なコスト削減に結びついた。

 

 

 

   成長目指す再生可能エネルギー分野

 

地盤・基礎分野では国内トップとなり、設立当初の目標を達成した同社が、今後伸ばしていきたい事業領域としているのが再生可能エネルギーの関連事業である。

 

特に地熱発電は天候に左右されず、わが国の基幹電源に成長する可能性を秘めていると考えているという。地盤関連の知識や経験を生かすこともできる。国内で多くの調査に参加してきている。

 

青森県内のプロジェクトでは、すでに地熱発電を活用したまちづくりにも参画し、地方創生の一翼を担っている。

 

さらに、今後は発電事業のSPC(特別目的会社)に出資するなど運営面にも積極的にかかわる方針である。

 

国の政策の後押しを受けて伸びている分野が海上風力発電だ。地盤コンサルタント会社のなかでは先駆けであり、関連業務の受注も増加している。

 

しかし今後は受注競争が激しくなる見通しである。これに対して先駆的な一般海域での調査実績と認証支援実績をアピールしていけば、成長を続けてきたエネルギー分野の売り上げをさらに伸ばすことは可能だという。

 

海上風力発電の開発は、候補地の選定、地形の分布をもとにどのような基礎形式となり、経済的に建設可能かを判断する資料調査、さらに海底音波探査、風車レイアウトの検討、第1次地盤調査を経て基本設計へと進む。

 

海底音波探査では、基礎となる岩盤の分布、水深を含めた地形、堆積している土砂の厚さなどを調べて具体的な設置位置決定の基礎資料とする。

 

 

 

ボーリング用海上足場

 

 

洋上風力発電のための地盤評価

 

 

 

調査は、水深、海底地形、地質に応じた適切なボーリング足場を選定し、さらにボーリングを補完するCTPやドリルシップを合わせて実施する。

 

採取したコアの分析をするのがジオラボセンターで、関東と関西に開設した最新設備の試験室である。

 

精緻な力学試験を担当するマルチ三軸試験装置は、完全自動制御によって、地盤の任意の応力状態を再現できる。最大粒径53mmの礫質土や改良土の物性を解明できる大型三軸試験装置もある。

 

 

 

大型三軸試験装置

 

 

 

これらによって地盤の特性を求め、調査結果を分析し、設計に必要な地盤情報を提供する。この一連のノウハウと実績が新たな受注に結びついてきた。

 

 

 

   衛星によって地盤の変形をモニタリングする

 

さらに、今後はどのような技術開発に取り組んでいくのか。コストを抑えながら精度の高い調査・分析ができる技術を目指すという。

 

従来の方法では、高精度の資料採取ができなかった砂や砂礫地盤に対応するGPサンプラーと呼ぶコアの採取方法は、2018年に日本発明協会の発明大賞を受賞し、海外でも注目されている。欧州の大手地盤調査会社にもライセンス提供をしている。多くの種類の地盤での実績を積み重ねており、世界各国へ展開中である。

 

 

GPサンプリング開発(2003年)

 

 

 

現在取り組んでいるのは、衛星を用いて地盤の変形をモニタリングして、調査に必要な場所を選定することができる技術。広範囲の地盤をすべて調査するのに比べて大幅なコストと時間の削減が可能になる。

 

また、AI(人工知能)で岩石の種類を自動判定する技術の開発にも着手するなど挑戦は続いている。

 

従来の成果にとらわれることなく、限られた期間内で対応したことが表彰につながった。

 

 

 

   ODAに頼らず現地と直接契約

 

国内とともに建設コンサルタント各社が注目している海外市場。

 

ODA(政府開発援助)によって進出する会社が多いなかで、現地政府や法人との直接契約を結ぶ方式を採用してきた。

 

1973年に海外進出してシンガポールの拠点を設け、MRT(地下鉄)やチャンギ空港、話題のホテルであるマリーナベイサンズなどの代表的なインフラや構造物を手掛けてきた。

 

 

Marina Bay Sands 地盤調査(2006年)

 

 

 

世界最大級のトウアス港湾プロジェクトでは、総額10億円規模の海洋調査も実施している。

 

40年に及ぶ実績によって築いてきた信頼によって、シンガポール政府の評価は高く、最上位にランクされており、直接発注業務は確実に押さえていく方針だ。

 

同時に現地法人のあるマレーシア、関連会社のあるインドネシア、グループ会社の長大が強みを持つフィリピンなどアジア各国の活躍の舞台を展開。

 

売り上げに占める海外部門の割合を現在の10%余りから15%以上に高める方針を打ち出している。

 

                                  (2019年6月時点)