
出典:令和7年10月上下水道DX技術カタログ (国土交通省)より
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply_sewerage/jyouge_dx/pdf/jyoge_DX_catalog.pdf
安心・安全な生活に不可欠な重要インフラである上下水道。良質な上下水道サービスを将来にわたり安定的に提供し続けるには、デジタル技術を活用して、メンテナンスを高度化・効率化する「上下水道DX」の推進が重要となる。国土交通省は、上下水道施設のメンテナンスの高度化・効率化に向けたデジタル技術の導入を後押しするために、「上下水道DX技術カタログ」を策定し、2025年3月にホームページで公開した。同カタログを活用することで、水道事業者や下水道管理者が今後3年程度で全国の上下水道施設にDX技術を標準実装できるようにしたい考えだ。

| DX技術の活用でメンテナンスを高度化・効率化 |
全国の水道管の総延長は約74万km(2021年度末)、下水道管渠の総延長は約49万km(2022年度末)に及ぶ。いずれも老朽化が進行しており、水道の場合は、法定耐用年数(40年)を経過した管路が総延長の約22%(延長約7万km)を占め、その割合が10年後は約41%(約30万km)、20年後は約66%(約49万km)と今後急増することが見込まれている。下水道も同様に標準耐用年数(50年)を経過した管渠は現状では総延長の約7%(約3万km)だが、10年後は約19%(約9万km)、20年後は約40%(約20万km)と急速に増大する見通しである。
一方、両事業に携わる職員数の推移を見ると、水道はピーク時の7.5万人から4.7万人と約37%減少、下水道はピーク時の4.7万人から2.7万人と約43%減少しており、特に施設管理に精通した熟練職員の減少が著しいという。加速度的に進む老朽化と人材不足に直面する全国の上下水道施設には、まさにメンテナンスの高度化・効率化に向けた早急な取り組みが求められている。
こうした現状を踏まえ、国交省は2024年12月、関係省庁や学識者、地方公共団体などの関係者による「上下水道DX推進検討会」を設置し、将来にわたり持続可能な上下水道システムの構築を実現することを目標に、メンテナンス効率の向上や事業の基盤強化などを図る具体的方策について検討に着手した。併行して同省は、上下水道施設のメンテナンスの高度化・効率化に役立つデジタル技術の収集に取り組み、「上下水道DX技術カタログ」に掲載する技術情報を2025年2月に広く募集。収集した技術情報をもとに、水道事業者や下水道管理者が「点検調査」、「劣化予測」、「施設情報の管理・活用」などに活用できるDX技術(計119技術)を掲載した同カタログを3月28日に公開した。
カタログには当初、水道73、下水道91のDX技術( どちらにも活用できる技術があるため合計は一致しない)を掲載。さらに日進月歩の技術革新に対応してカタログの拡充を図るため、7月にも新技術の公募を行い、新たに45技術を追加した改訂版を10月3日に公開している。

出典:令和7年10月上下水道DX技術カタログ (国土交通省)より
https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/watersupply_sewerage/jyouge_dx/pdf/jyoge_DX_catalog.pdf
| 目的・要素技術の選択で知りたい情報を検索可能 |
「上下水道DX技術カタログ」の掲載技術は、上下水道施設の劣化状況を定量的に把握できる調査技術や、健全度などを客観的に把握できる診断技術、損傷・劣化による事故・故障などのリスクを評価できる技術など、既に実用化され国内で導入実績のある技術を対象としている。処理場やポンプ場の運転操作に関する技術や設計・施工に関わる技術、実証段階の技術などは対象外とした。
同カタログは使い勝手の良い検索機能を備えており、利用者が知りたい技術情報を容易に入手できるような工夫が施されている。掲載技術の「対象施設」は、水道が取水、導水、浄水、送配水の各施設と給水装置、その他。下水道が汚水処理、汚泥処理、ポンプ場、管路の各施設とその他に分類。利用者の「目的」(点検調査、劣化予測、施設情報の管理・活用)に応じて、希望する「要素技術」(人工衛星、AI、ビッグデータ解析、ドローン、TVカメラ、スマートメーター、IoT、センサー、ロボットの9項目)を選択して技術内容やコスト、導入実績等を調べることができる。
2025年1月28日、埼玉県八潮市で劣化した下水道管路の破損に起因する大規模な道路陥没事故が発生。直接目視できない地中で、重要インフラの劣化が密かに進行し、重大な事故につながった厳しい現実を社会に突きつけた。これを受け、国交省は同種・類似の事故の発生を未然に防ぐため、有識者で構成する対策検討委員会を設置し、2月21日に第1回の会合を開催。同委員会の提言を踏まえ、3月18日に地方公共団体に対し、下水道管路の全国特別重点調査を要請した。
一連の調査に活用できるDX 技術についても、①管路内調査の無人化・省力化技術、②大深度空洞調査技術、③大口径管の管厚・強度測定技術、④センシングによる継続的なモニタリング技術―に分類して同カタログに掲載している。
維持管理業務の省力化・高度化を実現した下水道統合管理GISシステム
台帳情報、現場写真、点検データ、管内カメラ調査映像などの情報に加え、家屋情報(住基情報)や土地情報(地籍、受益地)など様々な情報を登録し、それぞれのデータがシームレスに連携することで情報の整合性を保ち多角的な分析を可能にした。 また、排水設備工事や公共桝設置などの申請情報もシステム上で管理し、各種様式に対応した様々な調書を作成、出力できるため市役所、役場職員の負担を軽減する。 システム導入時には、紙の台帳のデジタル化などを経験豊富なエンジニアが一貫してサポートする。
E-Qias Cloud(イーキアス クラウド)
「E-Qias Cloud(イーキアス クラウド)」は、上下水道や排水処理などの公共インフラ施設を対象に、遠隔からの監視・制御を可能にするクラウド型遠隔監視制御システムである。スマートフォンやタブレットを用いた操作により、現場の状況をリアルタイムで把握でき、迅速な対応と業務の効率化を実現できる。施設の安定稼働を支える多彩な機能を備え、異常の早期発見や保守管理の最適化、災害時の対応力向上にも寄与する。柔軟性と安全性を兼ね備えたクラウド型遠隔監視制御システムである。
ポンプゲートの無水管理運転とAI診断システム
浸水被害を未然に防止し、地域の安全を守るインフラ設備である排水機場。近年、既存水路を活用して、狭小なスペースでも設置できるポンプゲートの導入が増加している。一方で、従来のポンプゲートは水を溜めての点検運転が難しく、目視点検でしか確認できず、故障リスクの懸念が課題であった。 ㈱クボタのポンプゲートは、ゲートを上げた状態で水無し空運転での点検運転を可能とし、その点検運転データからポンプの健全度をAI 診断で評価する。
アステラ・リカバー
人工衛星による観測データを解析し、広域での漏水調査対象箇所の抽出を行う技術で、漏水可能性の高い配管部のみに漏水調査対象を絞り込めるため、現地調査を大幅に効率化できる。漏水リスク予測とは異なり、実際に衛星によりセンシングされた地中の水濡れ位置のデータの提供が可能。
水管橋ドローン点検
令和5年3月水道法施行規則の改正に合わせて「水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン(厚生労働省 医薬生活衛生局 水道課)」が改訂された。その中で、水管橋の点検は5年に1回以上の定期点検を実施することが法令により義務付けられた。さらに、水管橋の直接目視が難しい部分においては、ドローン等の技術を活用して点検することが望ましい「推奨事項」とされている。 日本鋳鉄管株式会社が提供する水管橋ドローン点検は直接目視が難しい部分(水管橋の上面・側面・下面等)を安全、高精度に点検することを目的として開発された。
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