2023.04.01
水性塗料の採用で、法的規制のある密閉空間でも安心・安全に使用
KFケミカル株式会社
既存防錆スプレーの課題を解決する新技術 |
これまで構造物点検等において、応急処置材として使用されてきた防錆スプレーには、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の揮発性有機化合物(VOC)が一定量以上含まれた防錆塗料が使われており、いくつかの課題があった。
一つは、VOC は吸引による中毒など、作業者への健康障害リスクもあることから、特定化学物質障害予防規則(特化則)、及び有機溶剤中毒予防規則(有機則)により、箱桁内部や通気が不十分な密閉空間では、危険有害性を確認・周知して局所換気装置の設置が必要などの制限があること。もう一つは、VOC 及び一般的なスプレーの噴射剤に使用されるDME やLPG 等の液化ガスは引火、爆発する危険があり、特に密閉空間ではそのリスクが高かったことだ。さらにこれらは危険物倉庫への保管が必要であったり、運搬、現場への持ち込み量にも制限が生じたりする。
水性サビナーはこうした課題を解決する画期的な製品だ。従来使われていたVOC を含む防錆塗料の代わりに「水」を主成分とする水性防錆塗料を使用しており、特化則、有機則に抵触せず、密閉空間でも作業者の健康障害のリスクを大幅に低減した。また、引火、爆発の危険のない圧縮ガスを用いることで、火災や爆発事故の危険性もない。
水性サビナーは特化則、有機則に抵触せず、消防法においても非危険物となる唯一の防錆スプレーとして、使用場所や保管方法に制限なく、密閉空間でも安全に使用できるようになった。
開発したKF ケミカルは創業以来70 年、ファインケミカルを中心とした事業を行っており、近年は建設塗料事業や土木・建築事業も手掛け、構造物・インフラのメンテナンスに有効な補修資材や塗装材を数多く提供している。
シンナー・引火性ガス不使用でリスク軽減 |
水性サビナーの主な特徴は以下の通り。
●法律に触れず安全に使える
水性サビナーに用いた水性エマルション塗料は、特化則における規制対象物質は一切含有していない。有機則の規制対象物質については一部含有するものの、含有率が4%以下のため規制の対象にはならない。有機則、特化則に抵触しない仕様であり、屋内環境の通風が不十分な場所でも制限なく使用可能。
●引火の心配がなく扱いも容易
水性塗料は消防法上の非危険物扱いとなり、引火の心配もないため火災のリスクがない。運送や保管、持ち込み量などにも制限がないので扱いが容易。
●引火、爆発しない窒素ガスを使用
一般的に噴射剤として用いられるDME・LPGは、引火や爆発の危険性がある。水性サビナーは引火、爆発の危険がない窒素ガスを用いており、安全性が高い。内容塗料、内容ガス両方が引火しない仕様のため、火に向かって噴射しても鎮火する。
●臭いや健康面での心配が不要
主成分が「水」の水性塗料は、溶剤(シンナー)臭がしないので不快感がない。またシックハウス症候群の原因物質であるVOC 含有量が少ないので、人体への影響も極めて低い。
老朽化が進むインフラのメンテナンスに有効 |
このように水性サビナーは、使用が規制されていた密閉空間でも使えるため、すでに首都高速道路における構造物点検、東京都建設局の橋梁メンテナンス等の現場で、防錆の応急措置として利用が進んでいる。また臭いがないことから、医療施設の空調保守点検等、密閉空間以外の場所でも重宝されている。
道路をはじめとしたインフラ設備の老朽化が進み、点検・補修の重要性はますます高まっている。老朽化の原因となる土木鋼構造物の腐食対策(防錆)工として、施工が簡単で作業者や周辺環境への影響も少なく安心して扱える水性サビナーは、インフラ設備の延命化に寄与するものとして期待されよう。