2017.11.08

羽田空港アクセス線

 

 首都圏の鉄道網を強化する


 

 

 

 

品川新駅(仮称)予定地

 

 

 

首都圏の鉄道整備についての検討が進んでいる。国際競争力強化の必要性や少子高齢化への対応、首都直下地震など災害リスクの高まりなどを踏まえたもので、国土交通省では2016年4月に「東京圏における今後の都市鉄道のありかたについて(案)」をまとめている。

 

2030年を念頭に具体的な事業内容についても言及し、すでに実施に移されている事業もある。中でも注目の事業が羽田空港アクセス線だ。JR東日本が計画しているもので、羽田空港と既存の路線とを結び、直通運転をする。

 

 

 

   羽田空港へ3つのルート

 

 

 

 

 

羽田空港アクセス線 3つのルート(路線図)            出典:国土交通省

 

 

 

アクセス線には3つのルートがある。まず、既存の貨物駅である東京貨物ターミナルから羽田空港の第1、第2ターミナルの間に設ける羽田空港新駅までアクセス新線を建設する。延長が約6㎞の地下路線となる。

 

3ルートは、東京貨物ターミナル駅から別れ、東京駅方面へ向かうのが東山手ルートである。休止路線となっている東海道貨物線の大汐線を利用して田町駅付近で東海道本線に乗り入れる。接続路線として田町駅付近に大汐短絡線を建設する。東海道線に乗り入れることによって東京から上野、さらに東京上野ラインによって宇都宮線、高崎線、常磐線との直通運転も可能になる。

 

 

 

        

 

 

 

新宿方面に向かうのが西山手ルートである。東京貨物ターミナルから東品川短絡線を建設して、品川シーサイド駅~大井町駅間でりんかい線に合流し、大崎駅付近で山手貨物線に乗り入れる。すでにりんかい線との相互直通運転を行っている埼京線のほか、湘南新宿ラインとの直通運転などが想定されている。

 

もう一つが、臨海部ルートである。りんかい線の回送線を複線化してりんかい線の営業路線に乗り入れる。終点の新木場駅では、京葉線と路線がつながっている。

 

 

 

   関東近郊の各地からの利便性が向上

 

構想が明らかになったのは2014年。国土交通省交通政策審議会の東京圏の鉄道のありかたを検討していた小委員会でJR東日本が計画していることを表明した。総事業費は約3,200億円。羽田空港までの地下路線のほか、短絡線を建設したりするため、事業期間は10年としていた。

 

都心から羽田空港への鉄道アクセスは、羽田東京モノレールのほか、京浜急行が乗り入れており、運行時間の短縮も進む。京浜急行の品川駅~羽田空港駅間は、1998年には最速25分だったが、蒲田駅の改良などによって、2012年には14分に短縮された。モノレールも昭和島駅の追い越し設備の整備による空港快速の運行によって浜松町駅~羽田空港第1ビル間が最速17分で結ばれるようになっている。

 

しかし、いずれも乗り換えが必要であり、国際線ターミナル開業後は大型の荷物を持った利用客が増加していた。これに対して羽田空港アクセス線が開業すれば、乗り換えの必要がなくなることによって、所要時間が大幅に短縮される。千葉、茨木、埼玉、栃木、群馬など首都圏近郊の各地から羽田空港へのアクセスが向上する。また、休止線などの既存のストックを活用することによって全線新線に比べて早期整備が可能になる。

 

                                                                            (2017年11月時点)