2017.09.26
40年に及んだ道のりを経て建設が本格化した新たな動脈
LO系 |
時速500㎞――、新幹線の約2倍ものスピードで走行するリニア中央新幹線の建設が本格化した。
JR東海(東海旅客鉄道株式会社)では、品川~名古屋間の工事に2015年から相次いで着手している。南アルプスを貫く長大トンネルや新幹線などの営業線の直下の工事となる品川駅や名古屋駅など難易度の高い工事に挑む。
全国新幹線鉄道整備法に基づき(超電導リニアによる)中央新幹線計画を進める |
中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法(以下、全幹法)に基づいて進められており、40年以上も前の1973年に運輸大臣が中央新幹線を基本計画として決定した。
リニア中央新幹線の概要 全国新幹線鉄道整備法の手続きの流れ
それから30年余りの検討期間を経て、懸案の一つであった事業主体について、JR東海が2007年12月に「自己負担で建設する」と名乗りを上げたことによって計画は大きく前進した。
全幹法に基づくJR東海の調査報告、国土交通省の交通政策審議会での審議を経て、2011年5月に国土交通大臣がJR東海を営業主体、建設主体に指名し、整備計画が決定された。
足掛け4年に及ぶ環境アセスメントの手続きなどを実施して、2014年10月に品川~名古屋間の工事実施計画(その1)が認可されたというのが、これまでの主な経緯だ。
JR東海では、中央新幹線の建設には先進性や高速性などの面から超電導リニアの採用が最もふさわしいと考え、国鉄分割民営化の会社発足当初から開発に取り組んでいた。
1997年から山梨リニア実験線で走行試験 最高速度603㎞を記録する |
1990年には、山梨リニア実験線の建設に着手。完成した1997年4月から走行試験を開始し、5月には浮上走行に成功した。12月には早くも設計最高速度である時速550kmを無人走行で記録している。
有人走行でも、1999年4月に552km、2003年12月に581kmを記録し、さらに、2015年4月には最高速度記録を603kmに伸ばした。
超電導リニア技術については、東海道新幹線が開通する以前の1962年から日本国有鉄道が開発に着手し、分割民営化後、公益財団法人鉄道総合技術研究所とJR東海に引き継がれてきた経緯がある。
基本的な走行の原理は従来の鉄道とは全く異なる。従来は新幹線を含めて架線から取り入れた電気で車両のモーターを回して車輪によって走行していた。
これに対して超電導リニアは地上から約10cm浮上して走行する。超電導リニアは日本独自の先端技術であり、車輪とレールとの摩擦を利用して走行する従来の鉄道と大きく異なる点である。
超電導現象の原理
超電導とは、極低温において電気抵抗が0になる現象。 例えば、ニオブ・チタン合金ではマイナス269℃とい う液体ヘリウムに浸した場合に超電導状態となる |
車両に搭載した超電導磁石と軌道に設置した推進コイルとの間に発生した磁力によって走行する。これらが、従来のモーターの役割を果たし、車両は軌道と非接触で走行するため、レールと車輪との摩擦抵抗もなくなり時速500km以上の超高速を可能にした。
さらに新幹線などに比べて加減速の性能が高く、坂にも強い。また、航空機と比較して二酸化炭素の排出量が少ない。
これらの特徴を根拠に中央新幹線の走行方式を超電導リニアとする整備計画が決定されることになった。
駆動の原理
(2017年9月時点)
※図版の出典:JR東海