2017.09.26

リニア中央新幹線②

 

 東京~大阪の所要時間が「のぞみ」の2分の1以下
 建設費は9兆300億円に


 

 

 

中央新幹線(東京都-名古屋市間)の路線

 

 

 

東京(品川)と大阪を最速67分で結ぶリニア中央新幹線。

 

 

 

 

 

 

第一局面として進めているのは、品川~名古屋間である。山間部では長大トンネルが連続する。南アルプスを初めて貫くなど、難易度の高い工事が予想されている。
品川~名古屋間には、4つの駅と2カ所の車両基地も同時に建設する。

 

 

 

   東京から名古屋間までの286㎞を先行 JR東海が自己負担で建設して運営する

 

リニア中央新幹線の路線延長は、東京~大阪間が約438km、うち名古屋までが約286kmである。

 

東京の品川駅を起点に神奈川県内を西進し、山梨、静岡、長野、岐阜の山間部を長大トンネルを中心にして抜け名古屋へ。これまで走行試験を行ってきた山梨リニア実験線も営業線の一部となる。

 

名古屋以西は、奈良市付近を通って、大阪に至るというルートが計画されている。

 

営業速度が時速500kmで、所要時間は名古屋までが最速40分、大阪までが最速67分である。現在の東海道新幹線のぞみの2分の1以下だ。都心間の実質的な所要時間は、航空機の約半分に短縮されることになる。

 

工事費は、車両費を含めて大阪までが9兆300億円、うち名古屋までが5兆5,235億円である。

JR東海が自己負担で建設し、管理・運営する。品川~名古屋間には、4つの駅を設ける。神奈川県相模原市と山梨県甲府市、長野県飯田市と岐阜県中津川市だ。駅名については決まっていない。このほか、相模原市と中津川市に車両基地を建設する。

 

 

 

JR東海では社内に中央新幹線工事費削減委員会を設置。全てについての工事費やコストを検証し、安全を確保したうえで、徹底的に経費を圧縮していく。同時に経営状況に応じた資源配分の最適化を図るなど柔軟に対応していく方針だ。

 

 

 

   日本の屋根・南アルプスを初めて貫く 全長25㎞に及ぶ長大トンネル

 

JR東海では、2014年10月に工事の実施計画の認可を受けてから沿線住民らに対する250回以上に及ぶ事業説明会を実施し、その後、中心線測量、設計・協議、用地取得など建設に向けた準備を進めてきた。

 

全線で初めて本格的な工事に着手したのは、南アルプストンネルの山梨工区である。JR東海では、2015年8月に本体工事の契約を締結し、12月に安全祈願と起工式を行って、本格的な土木工事に着手した。

 

南アルプストンネル新設(山梨工区)

安全祈願での鍬入れ

 

 

 

日本の屋根でもある南アルプスを初めて貫く南アルプストンネルは、全長が約25kmに及び、地表面からトンネル最頂部までの深さを示す土被りも最大で約1,400mある。

 

土被りが1,000m以上になると高い土圧によって掘削したトンネルの壁面などが崩れる山ハネと呼ばれる現象が発生することが多いと言われている。加えて工期が長く、難易度が高い工事が予想されることから、最初に発注された。

 

これまでも十分な地質調査を実施しているが、土被りの大きな本坑に先行して前方の地質を確認する先進坑を掘り、最先端の探査技術を用いて水平ボーリングも実施し、前方の地質を確認する。

 

工事は非常口にもなる7カ所の斜坑から行い、先進坑に続いて本坑の掘削を進めていく方針だ。

 

 

 

南アルプストンネル

斜坑掘削の準備(のり面補強工)         斜坑掘削

     

広河原非常口(2017年5月)            小渋川非常口(2017年7月)   

 

 

 

トンネルの掘削による周辺の水資源への影響に対しても、最先端の探査技術を用いて地質や地下水の状況を把握したうえで、適切に施工していくほか、工事中も河川の流量、井戸の水位や水質等の調査を行い、できる限り環境影響の回避又は低減を図っていく。

 

掘削による建設発生土は、事業区間内で再利用を図るとともに、関係自治体の協力を得て、他の公共事業や民間事業で有効利用することも計画している。

 

 

 

南アルプストンネル

斜坑掘削 

早川非常口(2016年11月)   

 

 

 

                                 (2017年9月時点)

                               ※図版の出典:JR東海