2018.04.17

首都高再生②

 

 日本橋を覆っていた高架橋を撤去する


 

 

 

 

 

日本の道路の原点である「お江戸日本橋」の上空を覆っていた高速道路の高架橋を撤去する計画が進んでいる

 

景観を阻害しているという指摘がかねてからあった。老朽化していることもあり、現状での補修などをせずに思い切って地下化する検討が国土交通省、東京都、事業主体となる首都高速道路株式会社、さらに地元の中央区や街の再生に取り組む地元の団体など官民共同で本格化した。

 

 

 

日本橋上空の現状                          出典:国土交通省

 

 

 

   供用を急ぎ河川を用地に建設

 

 

 

 

 

 

首都高は、前回の1964年に開催された東京オリンピックに向けて一気に整備された。

 

建設用地を確保するために地元住民と交渉していたのでは時間が掛かり、オリンピックに間に合わない。買収費用などのコストも掛かる。
そこで、都内にあった河川に高架橋の橋脚を設置することにした。日本橋の上に架かる高架橋もその一つだ。

 

 

 

    

 

 

 

江戸五街道の起点である日本橋は、明治に道路元標が設置された。ルネッサンス様式の石造りの橋であり、1999年には国の重要文化財にも指定されている。周辺の日本橋エリアでは、再開発が進み、国内だけでなく海外からの観光客も増えている。日本橋をバックにして写真撮影する姿も増えているが、肝心の橋自体は、さらに上空に架かる橋に覆われて日の光が遮られている。
景観を阻害しているとして、政府の有識者会議からも地下化に言及した提言もあったが、実現に至らなかった経緯がある。

 

 

日本橋周辺の首都高速の現状           首都高速を撤去した場合のイメージ

                                        出典:首都高速の再生に関する有識者会議 提言書

 

 

 

しかし、今回は国を含めて本腰を入れて取り組むことになってきた。景観問題だけではなく既存の高架橋自体が老朽化してきているといったことなども背景にはある。

 

 

 

   都市景観の改善や首都高の老朽化も背景に

 

 

 

    

 

 

 

建設から50年以上を経過し、2014年には、首都高大規模更新計画が策定されている。2016年には、日本橋周辺での街づくりの取り組みが国家戦略特区の都市再生プロジェクトに追加された。これによって、都市計画決定が迅速になるなどの行政手続きが優遇されて、街づくりが進んだ。

 

2017年6月には、地元の民間団体である名橋「日本橋」保存会と日本橋地域ルネッサンス100年計画委員会が、首都高の高架橋撤去についての請願書を参院議長に提出。中央区からも7月に国や都に対して地下化の申し入れが提出されるなど地元の機運も高まっている。

 

これらを受けて、地下化事業に向けての検討が本格化することになった。区間は日本橋を含めた首都高都心環状線の竹橋~江戸橋ジャンクション(JCT)間の約2.9kmが候補となっている。具体的な区間や線形、構造などの計画は今後、関係者間で協議していく。2020年の東京オリンピック、パラリンピック開催後に着工する計画である。

 

事業費は数億円規模になる。これをいかに捻出するかも今後の大きな課題である。現状の高架橋のままで改修したとしても約1,400億円掛かると首都高速道路株式会社では試算していた。地下化すれば、大幅に膨らむことになる。かつて地下化構想が浮上した時の試算では4,000億円~5,000億円と見積もられていた。
事業費を圧縮するためには、建設面でのコスト削減に加えて、民間との連携も必要になってくる。周辺で進む再開発ビルの下に地下化するための道路空間を設けたり、都心環状線と並行して走る八重洲線を活用して施工区間を短くしたりする方法もある。

 

1日に約10万台が走行する高架橋を生かしながらの工事となり、技術的な課題も多い。首都高の新設路線では、既存の地下鉄などを避けて、大深度地下にしてきたが、今回は逆に地下鉄の上の浅い部分にする計画も検討されている。周辺の再開発ビルなどとの建設に合わせれば、工事費の削減にもつながる。

 

具体策については、検討すべき課題が山積しているが、都市景観を一新する代表的な事業となる。日本橋の上に青空が戻ってくる日に期待がかかっている。

 

                                                                             (2018年4月時点)