2018.03.20

地方創生②

 

中心市街地活性化


 

 

 

   集約型の都市にする中心市街地活性化

 

地域活性化に向けた地方自治体の取り組みを国が支援する地方創生には、主なものだけで15の施策がある。まちづくりや産業遺産の世界遺産登録推進、特区の認定など多彩なメニューが用意されている。

 

中でも全国各地で実施されているのが中心市街地活性化である。認定された計画は、実施から10年間で200を超えている。

 

 

 

   人口減少や超高齢化社会に対応する

 

この取り組みの背景にあるのは、人口減少や超高齢化社会の到来である。すでに、わが国の人口は2006年をピークに減少に転じ、高齢化率も高まり、2050年には3人に1人が65歳以上の高齢者になると推計されている。

 

まちは、これまで拡散を続けてきた。住宅や郊外型の商業施設だけでなく、病院、市役所、学校も郊外に分散している。かつて賑わっていた中心地の商店街はシャッター通りとなり、空洞化が進んでいる。

 

特に地方では車社会となり、運転ができなければ生活にも困窮するような状況になっている。ガソリンの消費による環境負荷が増大し、CO2(二酸化炭素)削減を目指す政策に逆行しているという実情もある。

 

高齢者を含めた市民が暮らしやすいまちにする。拡散に歯止めをかけてアクセスしやすい生活拠点づくりに取り組んでいくのが、中心市街地活性化である。コンセプトは、「コンパクトなまちづくり」。中心部に都市機能が集約した生活拠点を再生していく。

 

    

 

 

 

   既存のストックを活用していく

 

拡散すれば、上下水道などライフラインの整備が必要になり、維持管理にもコストが掛かる。集約すれば、自治体の財政負担は軽減することになる。

 

中心地には、公共交通ネットワークや都市機能、インフラなどの既存のストックがある。これらを活用していくことで、かつての賑わいを取り戻すことを目指していく。

 

活性化のための計画は、市街地の整備、交通アクセス、まちなか居住、公益施設、商業・業務の5つの要素で構成される。単に活気のなくなった商店街を復活させるのではなく、マスタープランに沿って総合的にまちづくりを推進する。

 

 

 

 

行政や市民、商店、企業などが将来像を共有して、まずビジョンを描く。そのうえで、実現に向けて5年程度で実行可能なプログラムを明確にする。

 

さらに重要なのが持続していくことだ。そこで、都市空間の管理運営、土地の合理的活用、地域固有の価値の創出、地域経済環境の構築、市民・民間の参加の5つの視点を持って取り組んでいくことが重要になってくる。例えば、中心地に残されている昭和の街並みを活用したり、地場産業や生産者と連携したりしてヒト、モノ、カネが循環するような地域経済を構築する。

 

    

 

 

 

   国が補助を含めて手厚い支援策

 

これに対して国は、中心市街地活性化法を改正して総合的かつ一体的な支援をしてきた。法律、税制の特例や補助事業を実施してきている。

 

事例としては、空きビルを公共公益施設や集客施設へ改修するほか、まちなか居住を促進するため、良質な共同住宅の供給などがある。さらに環境改善と防災機能の向上に向けた再開発、道路や公園、駐車場などの都市基盤施設の整備も補助対象となる。一定の条件を満たせば、交付金の対象となる事業枠を拡大する制度など手厚い支援策を設けている。

 

各事業の実施に向けて、国は調査、計画の立案・調整に協力するほか、必要に応じてコンサルタントを派遣する。

 

さらに、計画の促進を図るために、各自治体からの事前相談も受け付けている。内閣府の中心市街地活性化担当室のほか、国土交通省の各地方整備局でも対応している。

 

自治体は、申請マニュアルに基づいて基本計画を作成して内閣府の担当室に申請し、基準に適合しているかなどの審査を経て、認定されることになる。

 

第1号は、2007年2月の富山市と青森市。これを皮切りに増加を続け、2017年6月までに141市212計画が認定された。すでに半数以上が計画を完了して、6月時点で実施段階にあるのは94計画。1期計画を終えて2期計画に取り組んでいる自治体もある。

 

                                 (2018年3月時点)

                             ※図版の出典:国土交通省