2018.04.17

首都高再生①

 

 オリンピックに向けて一気に整備を促進


 

 

 

動き出した首都高速道路の日本橋の地下化計画。かねてから景観を阻害していると指摘のあった一方で、老朽化して更新の時期を迎えているという背景もある。

 

首都高は前回の1964年に開催された東京オリンピックに向けて急速に整備された。建設用地の取得交渉をしている猶予はない。

 

着目したのが河川だった。そこで、日本橋に代表されるように多くの路線が河川上に建設された。更新の時期を迎えている首都高をどう再生していくのか。

 

 

 

   建設から半世紀以上を経て相次いで更新の時期へ

 

首都高は、1962年に京橋~芝浦間が開通し、オリンピック後も供用延長を伸ばしてきた。首都圏の大動脈としての役割を果たしてきたが、それだけに大型車両の割合も多い。しかも多くの区間が高架橋であり、過酷な使用環境を強いられてきている。供用から50年以上を経過し、老朽化によって疲弊し、多くの区間、部分で悲鳴を上げているのが実情である。

 

補修を繰り返すことで、どうにか機能は維持しているが、抜本的な再生策が求められている。日本橋を中心にした首都高都心環状線の地下化には、景観に加えて老朽化が背景にあり、いわば一石二鳥の策として事業は本格化することになった。同時期に建設された他の区間も同様に更新の時期を迎えているということである。

 

社会資本の更新時期は50年が一つの目安とされているが、前回の東京オリンピックに向けて建設された首都高は多くの区間が、その時期を迎えている。2012年には首都高の再生に関する有識者会議が提言書をまとめている。国もまた提言を踏まえて再生の将来像を作成している。

 

 

 

   都心環状線を中心にした放射路線
 郊外からの通過交通が集中する宿命に

 

首都高は都心環状線を中心にして首都圏近郊へ向けて各路線が放射状に伸びている。まず建設されたのが、前回の東京オリンピックに向けて集中的に整備された都心部である。その後に放射路線が建設されて、常磐自動車道や東北自動車道、中央自動車道、東名高速道路と接続するネットワークが完成した。

 

ところが、東北方面から例えば関西方面に向かうには首都高を経由しなければならない。通過車両にとっては、巨大なジャンクション(JCT)の役割を果たし、大型車両を中心にした渋滞が慢性化していた。これを解消するために中央環状線のほか、都内を迂回する東京外環自動車道や首都圏外郭環状道路などの整備が進み、通過交通は減少してきたという経緯はある。

 

しかし、いまだに慢性的な渋滞が随所で発生し、大型車両の割合も多い。高架橋やトンネルなどの構造物の比率が約95%に達していることもあり、計画的な補修を実施してきているものの、必要とされる損傷は増加しているのが実情である。

 

前回のオリンピックは、首都高を一気に整備する好機でもあった。しかし、50年以上経過し、補修しながらどうにか使い続けるという状況ではすまなくなってきているといえよう。さらに、首都直下型地震など自然災害への対応も求められている。高架橋などの耐震補強は順次実施してきているが、老朽化と合わせた抜本策が求められている。

 

そこで、2014年11月に国は首都高の更新計画の事業を認可した。大規模更新が3路線、大規模修繕が1路線で、用地費を含めた事業費を6,262億円としている。このうち、大規模修繕に盛り込まれているのが、日本橋区間を中心にした都心環状線の竹橋~江戸川橋間である。事業費は1,412億円で、事業期間は2015~2028年としていた。しかし、地下を前提にすることになったため、事業費は大幅に増加する。

 

都心環状線では、銀座~新富町間の1.2km、1号羽田線では東品川桟橋~鮫洲埋め立て地間1.7kmと高速大師橋の0.3km、3号渋谷線の池尻~三軒茶屋間の1.5kmが大規模更新の対象区間で、延べ8km、事業費は合わせて3,775億円と試算している。
一方の大規模修繕は東名高速道路の接続する3号渋谷線と中央高速道路につながる4号新宿線などで延べ55km、事業費は合わせて2,487億円が想定されている。

 

 

首都高 1号羽田線

首都高 4号新宿線

 

 

大半の区間が供用から50年以上を経過し、首都高のなかでも通過交通が多く大型車両などによる劣化が進行している。しかも首都高にとって重要な区間であり、先行して大規模な改修を実施することになった。

 

                                 (2018年4月時点)