2018.04.17

首都高再生③

 

 都心から放射状に拡大した路線は総延長約320km


 

 

                                  出典:国土交通省

 

 

 

首都高は都心部の環状線を中心にして郊外へと路線を伸ばしてきた。千葉、埼玉、神奈川などへとネットワークを拡大して多くの高速道路網と接続している。

 

国が再生計画を策定した時点で首都高の総延長は約320kmである。このうち約5割が建設から30年以上を経過していた。その割合は年とともに増すばかりであり、これを裏付けるように損傷による補修件数は増加の一途を辿っている。まさに右肩上がりで、2002年から2009年のわずか7年で約3倍に増加したという統計もある。

 

 

 

   合流と分離を繰り返す 複雑な平面線形 

 

前回の東京オリンピックに向けて河川などの公共用地を利用して一気に整備したため、平面線形も複雑なのも首都高にとっては宿命的な課題となっている。
合流や分流が多く、2車線が合流したのに、その先は2車線という部分もある。さらに分流では車線を横切るようにしなければならない部分も多い。

 

都心環状線では延長約15kmのうち右側への分流と合流が24ヵ所ある。これに対して、延長347kmの東名高速道路には1ヵ所もない。一般道から首都高に入った車が右の分岐車線に行こうとすれば、車線変更を繰り返す必要がある。走行安全性に影響があるばかりでなく、走行速度の低下を余儀なくされ、渋滞の要因にもなっている。

 

高速道路でありながら急カーブが連続する区間もある。ガードレールや防音壁が設置されているが、路線の両側にはビルや民家が林立している。高架橋が圧迫感を与えて、日本橋に代表されるように都市景観を阻害している。河川を占有しているため、都市にとっては貴重な水辺の空間が失われている。

 

 

采女橋周辺

出典:首都高速の再生に関する有識者会議 提言書

 

 

 

   首都直下型地震などの自然災害への対応策も課題に

 

老朽化対策に加えて首都高の再生で求められているのが、首都直下型地震など自然災害への対応である。阪神・淡路大震災では、阪神高速道路の高架橋が倒壊した。これを教訓にして耐震補強が実施されてきた。

 

だが、政府の想定では多くの建物の倒壊や火災による膨大な死者、経済損失などがあるとしている。首都の中枢機能への影響も避けられない。

 

自然災害の発生そのものは防げなくとも、被災者の支援や迅速な復興に向けた対策が求められている。首都高は、災害発生時の緊急輸送道路としての機能を発揮しなければならず、さらに自然災害への対策を強化し、整備が進む圏央道などの3環状道路とのネットワークを強化し、複数の路線を選択できる体制にすることが重要なテーマとなっている。

 

 

東名高速から東京都心へ至るパターン(試算)

                  出典:首都高速の再生に関する有識者会議 提言書

 

 

そのためにも首都高の要である都心環状線を中心にして確実な老朽化対策を実施し、都市高速としての機能を維持していく必要がある。単なる高齢化対策にとどまらない将来を見据えて世界都市東京を視野に入れた再生策が首都高には求められている。

 

                                   (2018年4月時点)