2018.02.20
概論
6年連続で過去最大を更新 |
増加を続ける国家予算。昨年末に閣議決定された2018年度予算案は、国の基本的な予算規模を示す一般会計の総額が97兆7,128億円で、6年連続して過去最大を更新している。
高齢化を背景に社会保障費が3分の1を超えるまでに膨張したことなどが大きな要因。政府は通常国会に予算案を提出して年度内の成立を目指す。
公共事業関係費は約6兆円 |
国土交通省を中心にした公共事業関係費は前年度とほぼ同額の5兆9,789億円を計上している。予算編成の基本的な考えは、安定的に事業費を確保したうえで、生産性向上のためのインフラ整備のほか、豪雨・台風災害などを対する防災・減災対策を重点的に推進していく。
主な内容としては、三大都市圏の環状道路などの整備を加速する。水害や土砂災害が発生した地域の再発防止策を進めてより安心・安全を確保する。道路と港湾などのインフラの連携による整備効果の最大化や下水道事業での民間活用の推進、既存ダムの有効活用、水害を防ぐ調整池の効率的整備など予算の質の向上を徹底していく方針である。
物流ネットワークを強化する |
具体的な予算額は、生産性向上のためのインフラ整備では、物流ネットワークの強化が2,283億円。
前年度に比べて4.6%の増加である。首都、中部、近畿の環状道路や空港・港湾へのアクセス道路の整備が主な内容である。低金利の状況を活かして財政投融資を活用することで整備を促進する。橋梁の耐震強化対策を含めて融資規模は1兆5,000億円になる。
新規に高規格幹線道路のIC(インターチェンジ)のアクセス道路の整備を促進するための地方自治体への個別補助制度を創設する。LNGバンカリング(燃料供給)拠点の形成を支援する予算も新たに計上した。2020年から硫黄酸化物の排出規制が強化され、LNG燃料船が拡大することを見据えたものだ。
港湾関係では、国際コンテナ戦略港湾や国際バルク戦略港湾の機能を強化していく。鉄道関係では整備新幹線の整備に755億円。函館北斗~札幌間、金沢~敦賀間、武雄温泉~長崎間の事業費に加えて、敦賀~大阪間の詳細なルートについての調査費も計上した。
自然災害による被害の再発を防止する |
災害対策も重点項目の一つである。2017年7月の九州北部豪雨や2016年8月北海道・東北豪雨などによって水害や土砂災害が発生した地域で洪水時の水位を下げる河道掘削、砂防堰堤の整備などを進めて被害の再発を防止する。大量の土砂で埋まった公共土木施設の復旧のため、事業費の3分の2以上を国庫で負担する。
既存施設の老朽化対策では、道路に6.5%増の3,683億円、河川管理施設等に1,8%増の1,986億円を計上した。長寿命化計画に沿って維持管理を行い、予防保全を前提としたメンテナンスサイクルを確立。コストの縮減や平準化を図るほか、橋梁の耐震強化などの防災・震災対策を進めていく。
大きな課題である東日本大震災からの復旧・復興は合わせて4,564億円である。このうち、復旧が1,059億円。河川、海岸、道路、港湾、下水道の公共土木施設の復旧事業を継続して実施する。被災地の復興は、3,505億円だ。道路や港湾などの復興支援のほか、市街地整備に伴う道路整備などの社会資本整備総合交付金として961億円を計上している。
(2018年2月時点)