2018.02.20
道路・鉄道
民間投資を誘発する都市圏の環状道路 |
2018年度予算案の公共事業関係費は、安定的な確保をしたうえで「質の向上」の徹底を基本方針に据えている。
具体策の一つが三大都市圏の環状道路の整備の加速などの交通インフラである。
圏央道の整備状況 |
予算額は、環状道路が4.6%増の2,283億円。首都圏の圏央道では、順次開通してきたことによって首都高速道路など都心に集中していた交通が転換されて迂回路としての役割を果たしている。沿道では、大型物流施設などの民間投資を誘発する波及効果もある。
統計では、5年の間に立地件数は90件増加、これに伴う従業者数は9,000人増加している。地価も上昇した。工業地の上昇率トップ10は圏央道の沿線に集中している。
さらに、圏央道については、未供用区間の整備促進に加えて暫定2車線区間の4車線化も進めていく。低金利の状況を利用して財政投融資を活用する。他の路線も含めて40年間の長期間固定で1兆5,000億円を追加する方針である。これによって、高速道路各社の金利負担が軽減され、投資余力が増大する。
圏央道では、埼玉県の久喜白岡JCTと千葉県の大栄JCT間を2024年までに全線4車線化し、同時期までに千葉県内の未供用区間の開通を目指す。中部圏の東海環状についても未供用区間の整備や4車線化について2024年を予定している。
新幹線の整備に加えて都市鉄道を強化する |
鉄道については基幹的な高速輸送体系である整備新幹線の整備を着実に進める方針だ。予算額は755億円である。
整備新幹線とは、北海道、東北、北陸、九州の鹿児島ルートと西九州ルートの5路線。
整備新幹線5路線 |
北海道新幹線については、新函館北斗~札幌間211㎞を2030年度末までに供用開始する計画である。東北新幹線はすでに全線開通している。2015年に金沢まで開業した北陸新幹線は、敦賀までの113㎞を2022年度末までに完成させる。九州新幹線西九州ルートの武雄温泉~長崎間66㎞も22年度末を予定しているが、可能な限り前倒しする方針である。
鉄道関連では、このほか都市や幹線の機能を強化する。予算額は247億円。大都市の活性化や競争力強化のために都市鉄道の相互直通化を進めると同時にバリアフリー化など駅の機能改善や耐震化、老朽化対策といった安全対策に取り組んでいく。
このための補助事業を実施する。新線建設のほか、耐震対策や浸水対策などの大規模改良工事を促進するのが都市鉄道整備事業費補助である。具体例としては、福岡市地下鉄七隈線延伸事業などがある。
駅の改良と併せてバリアフリー施設の整備などを支援するのが、鉄道駅総合改善事業費補助である。観光案内所や保育施設も併設する。次世代ステーション創造事業と呼んでいる。橋梁などの耐震化や老朽化対策を促進していくのが、鉄道施設総合安全対策事業費補助である。鋼橋には重防食塗装を行うなどして耐久性を高めていく。
このほか、交通インフラについては新たな交付金を創設する方針である。社会資本整備総合交付金(交通拠点連携集中支援事業)と呼ぶものだ。地方自治体が実施する空港や港湾へのアクセス道路整備、連続立体交差事業について国庫債務負担行為を活用しながら計画的、集中的に実施していく事業を支援するものである。
アクセス道路が整備されれば、物流は効率化して生産性は向上する。連続立体交差化でも鉄道を高架や地下化することによって、踏切による渋滞が解消され、交通が円滑化されることで物流の効率化につながる。限られた財政の中で「質の向上」を基本方針とした新年度予算の一例である。
(2018年2月時点)
※図版の出典:国土交通省