2018.02.20

2018年度政府予算案③

 

港湾


 

 

   大型化する船舶に対応するため港湾を大水深化して機能を強化する

 

島国である日本にとって港湾機能の強化は、永遠ともいえるテーマであった。経済や国際競争力を高めていくためには重要な施策である。新年度予算でまず、港湾関係で打ち出しているのが、国際コンテナ戦略港湾の機能強化である。政府案での予算額は766億円だ。

 

コンテナ船は、世界的に大型化する傾向にあり、国内に寄港する基幹航路の船舶の維持や拡大を図るため、予算案では「集荷」、「創荷」、「競争力強化」を3本柱にして取り組んでいく方針である。

 

 

集荷                     創貨

集荷促進のために投入されている国内最大の

航コンテナ船

流通加工機能を備えた物流施設

 

 

競争力強化

 

大水深コンテナターミナルの整備状況(横浜港)

 

 

 

集荷については、阪神港や京浜港といった国際戦略港湾へ国内各地からの貨物を集約する。コンテナ船の大型化に伴って各寄港地での積み下ろし時間が長期化する傾向にある。そこで、各地からは内航のコンテナ船で運搬して寄港地を絞り込み、国際コンテナ戦略港湾への利用を転換し、所要日数などの輸送サービスを向上していく。

 

さらに急務となっているのが、大型化による国際水準の深さや広さがある大水深コンテナターミナルである。1980年代から2000年頃までは積載できるコンテナ数が5,000個前後だったが、その後に急速に大型化して現在では2万個を積載できる大型船も登場した。これに伴って、岸壁の必要水深は深くなり、より広い荷役のためのターミナルが必要になってきているからである。

 

港の背後に物流施設を整備するのが創荷である。流通加工機能を備えた施設を建設することで取扱量を増やし、港湾関連事業を活性化していく。

 

大型化への対応は輸送コストの削減にもつながる。例えば、北海道や東北地方では飼料用とうもろこしなどの穀物を中型船で輸入していた。しかし、大型船が接岸可能な大水深の岸壁が整備されれば、輸送コストは4割程度削減可能だと試算されている

 

 

釧路港(飼料用とうもろこし)の例

 

 

 

石炭についても徳山下松港で水深19mの大型岸壁の整備が進む。2019年度に完成予定であり、現在の1.5倍以上の大型船の接岸が可能になる。共同購入することによって、輸送コストは2割程度削減できる見込みである。

 

 

 

徳山下松港(石炭)の例

 

 

 

   世界水準の生産性を備えたAIコンテナターミナルの実現へ

 

国内には世界一生産性が高いと言われる横浜港のコンテナターミナルがあるが、それ以外の港で荷役機械の遠隔操作や自動化を導入しているのは、名古屋港の飛島ふ頭だけである。

 

そこで、世界最高水準の生産性を備えるAIコンテナターミナルの実現にも取り組んでいく。将来的な労働力不足に備えて世界有数の国際港湾労働者の高い熟練技術力と遠隔操作化や自動化を融合する。京浜港と阪神港を対象にして荷役を効率化し、横浜港に続いて世界一高い生産性が高いコンテナターミナルを実現する。

 

 

 

AIコンテナターミナル(イメージ)                      

 

 

 

AIを活用したターミナルオペレーションによって、積み下ろしの作業回数を最小化できるよう配置計画を最適化する。情報技術を活用して搬入や搬出も迅速化する。荷役についても世界最高水準と言われるクレーンの熟練オペレータの操作、経験を分析して定式化することによって新規オペレータの早期の習熟度向上をめざしていくなどの施策も盛り込んでいる。

 

 

 

   2020年には500万人へ増加するクルーズ人口に対応する

 

貨物だけでなく旅客への対応も課題になってきている。世界のクルーズ人口の増加や船舶自体の大型化が進み、訪日するクルーズ旅客が2020年には年間500万人になることを国では目標にしている。寄港回数を見ても2017年は前年に比べても1.33倍に増加している。

 

既存のストックを活用したハード・ソフト両面の受け入れ体制に加えて、官民一体となった国際クルーズ拠点を整備していく。予算額は143億円。大型船に対応できる岸壁のほか、屋根付きの通路や移動式のボーディングブリッジなどの整備を国が支援することによって、旅客の利便性や安全性を向上させていく。

 

 

 

 

 

 

国内では、注目度が低かったクルーズだが、世界的には手軽なレジャーとして利用者は増加の一途。日本発着のクルーズを運行する海外の船会社も増加傾向にある。

 

 

                                (2018年2月時点)

                                ※図版の出典:国土交通省