2018.02.20

2018年度政府予算案④

 

 災害対策


 

 

   自然災害に備える防災対策
 各事業について増加を計上

 

予算編成の中で重点課題としているのが災害対策である。2018年度だけでなく自然災害が多発するわが国にとって永遠とも言えるテーマなのである。公共投資予算が横ばいを続ける中で予算額も増加している。

 

例えば激甚な水害・土砂災害が発生した地域の再発防止対策には、前年度に比べて24%増の492億円を計上している。2017年7月に発生した九州北部豪雨や2016年8月の北海道・東北豪雨などの激しい災害を受けた地域で、河川や砂防堰堤整備などの再発防止策に取り組んでいく。

 

九州北豪雨で被災した公共土木施設については、迅速な復旧を行うために公共土木施設等の災害復旧予算を533億円を当てる。自治体が実施する川幅を広げるなどの事業についても3分の2以上を国が補助する。

 

災害時には不可欠となる道路の代替路線の整備に5.5%増の3,494億円を計上している。防災や耐震化対策を推進する老朽化対策などの戦略維持管理には、道路が6.5%増の3,683億円、河川管理施設には1.8%増の1,986億円を当てて予防保全を前提としたメンテナンスサイクルを確立していく。

 

加えて頻発する風水害や土砂災害、大規模地震、津波に対する交付金として1兆1,117億円を計上している。自治体が実施する防災対策やインフラの長寿命化対策について集中的に支援するものである。

 

また、大量の土砂で閉塞した公共土木施設の復旧や川幅を広げるなどの改良的な事業も補助対象とすることにした。

 

 

 

   利用者が増加傾向にある
 東日本大震災関連の復興道路

 

東日本大震災関連では、復興や支援のための道路整備等が2,090億円である。2017年11月には、三陸沿岸道路の山田~宮古南間が震災後の新規事業として着手した区間で初めて開通している。

 

さらに被災した三陸沿岸道路の仙台~釜石間は2018年度までに約9割、東北自動車道の釜石~花巻間は年度内の全線開通を目指す。

 

すでに整備が進んだことによって、東北自動車道の釜石~花巻間の利用が促進されており、過去5年間でコンテナ取扱量は約1.6倍、利用する企業数は2.5倍に増加しているという統計もある。

 

 

 

   九州北部豪雨の被災地では
 河川などを緊急的に整備する

 

記憶にも新しい2017年7月に発生した九州北部豪雨。甚大な被害が発生した筑後川水系では、緊急的かつ集中的な復旧関連事業を計画している。決壊した堤防などの復旧と合わせて下流部の河川改修を実施して地域全体の安全を早期に確保する。

 

 

 

      

 

 

 

河川災害復旧等関連緊急事業と呼ぶ制度を採用する。約4年間で改修事業を実施することによって再発防止を図るものだ。河川の流量が5%以上減少することが見込まれることや全体事業費が10億円以上であることなどが補助の採択基準となる。

 

このほか、水害や土砂災害によって人的被害が発生した地域の再発防止に492億円を計上している。

 

対象の一例が2017年7月の梅雨前線に伴う豪雨で被災した秋田県の雄物川である。705戸の家屋が浸水した。堤防などを整備して氾濫を未然に防ぐ。

 

九州北部豪雨で山腹崩壊に伴う土砂の流出等で下流の集落に被害が発生した福岡県の赤谷川では砂防堰堤などでも防止策を実施していく。

 

 

2017年に発生した災害の例

      

雄物川(秋田県)               赤谷川(福岡県)

 

 

 

   効率的な予算執行に向けて
 事業内容の見直しも実施した

 

予算の執行については、効率的な整備のための見直しも実施した。首都圏の荒川中流域では、埼玉県南部に既存の第一に加えて、新たな調整池を計画している。事業は多くの用地確保を伴う面整備であり、補償方法に加えて工期縮減などの効率的な整備方法についても検討を重ねてきた

 

 

 

荒川流域図

 

 

 

第一調整池による洪水調節状況(1999年8月洪水)

 

 

 

これによって、工期の削減により効果的である工費の縮減などによる計画を策定。当初の予定では3カ所だった新規の調整池を2カ所所とし、約3,500億円程度と見込んでいた総事業費は1,700億円程度にまで削減できることになった。工期も30年から13年程度まで短縮できる見通しだ。2018年度の新規事業化に向けた手続きを進める予定である。

 

 

 

荒川調整池の事業計画図

 

 

                                  (2018年2月時点)

                              ※図版の出典:国土交通省