2018.05.22

東京圏の都市鉄道のあり方③

 

 都心と拠点地域のアクセスを向上する


 

 

つくばエクスプレス

 

 

東京の都心部には、複数のターミナルがある。多くの路線は、ここから各地方都市などへ放射線状に伸びている。

 

地方から都内を経由して他の地方に行く場合には、ターミナル間の移動を伴う場合が多い。JRの山の手線や地下鉄を利用したりする。

 

これを解消するために首都圏の鉄道では、各事業者間による相互直通運転が実施されてきた。

 

1960年には、都営浅草線と京成押上線が国内で初めて直結し、1968年には京急本線も加わり、3事業者間による直通運転が実現した。

 

2013年には、東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線、東急東横線、みなとみらい21線が一本になった。

 

自社路線内での直通運転化もある。例えば2001年にはJR湘南新宿ラインの開業によって、宇都宮線、高崎線と横須賀線が直結され、さらに2015年には上野東京ラインが開業して常磐線を加えた3路線が東海道線とつながった。

 

 

  

 

 

これらによって、1970年には855㎞だった相互直通運転が2015年には1,831㎞となり、東京圏の都市鉄道の総延長の75%を占めるまでになった。

 

 

 

   つくばエクスプレスを東京駅へ延伸

 

国際競争力を高めるためにはさらなる利便性の向上が求められている。その具体策として答申が「国際競争力強化の拠点となる地域へのアクセス利便性の向上に資するプロジェクト」として示したのが4事業である。

 

1つ目が、都心の秋葉原駅と茨城県のつくば駅を結ぶ常磐新線(つくばエクスプレス)の延伸である。秋葉原駅から東京駅間まで延伸するものである。

 

 

常磐新線の延伸

 

 

常磐新線の建設の目的は2つあった。1つは常磐線の混雑緩和だ。都心から茨城方面へ向かう常磐線は、通勤路線であると同時に水戸や仙台方面への長距離路線でもある。沿線の開発によって、通勤客が増加し、解決策として新路線が建設されることになった。

 

もう1つが沿線の開発である。ニュータウンの開発が進み、つくばには研究学園都市もある。首都機能移転の構想もあり、都心と結ぶ鉄道が必要だったのである。

 

計画段階では、当然のことながら東京駅を起点とする構想もあった。しかし、東京と秋葉原間の事業費がネックとなり、秋葉原が起点となった経緯がある。答申によって当初の構想が復活したことになる。

 

新設する路線延長は2.1㎞。総事業費は1,400億円である。答申では、つくば国際戦略総合特区と新幹線のターミナルである東京駅を直接結ぶことにより研究開発拠点と圏域外との対流促進が期待できるとしている。

 

さらに、東京駅での乗り換えの利便性向上のために他の路線との接続を考慮した駅の位置を検討されることを期待しているとしている。

 

 

 

   東京駅から臨海副都心への新設構想も

 

これと関連するのが2つ目の都心部・臨海地域地下鉄構想の新設と延伸した常磐新線との一体的整備である。

 

秋葉原から東京駅への常磐新線の延伸に加えて、銀座から臨海副都心の新国際展示場までの新路線を建設する。延長が8.6㎞、総事業費は6,500億円と試算されている。臨海副都心へは、新橋駅が起点のゆりかもめが主要なルート。実現すれば、アクセスの向上に加えて、山手線の混雑緩和にもつながる。課題は事業性だ。そこで常磐新線の延伸と合わせて整備し、直通運転を含めた事業化が提案されている。

 

 

都心部・臨海地域地下鉄構想の新設および同構想と常磐新線延伸の一体整備

 

 

3つ目も臨海副都心関連で、都営地下鉄有楽町線を豊洲から住吉まで延伸して半蔵門線に接続する。臨海副都心と都内東部の観光拠点や首都圏の北部地域とのアクセス向上を目的にしている。路線延長は5.2㎞、事業費は1,500億円である。すでに事業計画の検討は進んでいる。関連自治体や鉄道事業者間の費用分担や事業主体の選定などが課題となっている。

 

 

東京8号線(有楽町線)の延伸

 

 

4つ目は、都心部・品川地下鉄構想の新設と呼ばれるものだ。品川駅と地下鉄南北線の白金高輪駅を結ぶ。路線延長は2㎞、総事業費は1,600億円である。六本木などの都心部のエリアとリニア中央新幹線の起点ともなる品川駅とのアクセス向上が目的だが、検討の熟度が低く構想段階であるのが実情だという

 

 

都心部・品川地下鉄構想の新設

 

 

いずれのプロジェクトも利用者にとっては利便性が向上するのは確かだが、構想通りの利用者が実際にあり採算性が確保できるのか。事業費をいかに確保するか。関係者との調整や事業主体など、多くの課題が山積しているのも確かである。

 

                                 (2018年5月時点)

  ※図版の出典:国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会