2018.05.22
国際競争力の強化を目指し空港アクセスを向上させる
京浜急行 |
京成電鉄 |
2030年を目標にした「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の答申では、6つの目標に沿って機能別に3つのプロジェクトに分類している。
「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」、「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」、そして「駅空間の質的進化に資するプロジェクト」である。では、どのようなプロジェクトがあるのか。
羽田空港と成田空港をより近くする |
「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」は、「空港アクセスの向上に資するプロジェクト」と「国際競争力強化の拠点となる地域へのアクセス利便性の向上に資するプロジェクト」に分類されている。
空港アクセス関連は4つ。その1つ目が都心直結線の新設である。京浜急行本線の泉岳寺と京成電鉄の押上線間に新たな路線を建設して、羽田空港と成田空港間との直通相互運転ができるようにする。沿線の各駅に加えて東海道新幹線が停車し、建設中のリニア中央新幹線の始発駅である品川駅とも直結するルートとなる。新設区間の延長は11㎞。総事業費は4,400億円が見込まれている。途中には新東京駅を新設する計画である。都心部での大深度のトンネルを中心にしたプロジェクトとなる。事業主体に加えて事業性、さらに施工条件などの精査が求められるプロジェクトでもある。
都心直結線の新設 |
2つ目が羽田空港アクセス線であり、すでに紹介しているので詳細は省略する。延長が20.5㎞、総事業費が3,400億円。羽田空港と北関東の各地域とのアクセスが向上し、埼玉県の久喜駅では東武伊勢崎線と東北本線との相互直通運転化などの工夫によって、さらに広域圏からの利便性が向上することも期待されている。羽田空港アクセス線と関連して京葉線とりんかい線を相互直通運転化する。これによって、千葉方面との利便性が向上することになる。
羽田空港アクセス線の新設および京葉線・りんかい線相互直通運転化 |
JR、私鉄や地下鉄とも直通相互運転を |
3つ目が空港新線の建設である。京浜急行玉川線の谷口橋と蒲田、空港線の京急蒲田と大鳥居間との新路線である。延長は合わせて5.7㎞、事業費は3,100億円である。実現すれば、東急東横線や東京メトロ副都心線、東武東上線、西武池袋線との相互直通運転も可能になる。新宿、渋谷、池袋のほか東京都北西部、埼玉県南西部と羽田空港が直結されることになる。すでに具体化に向けた事業計画の検討は進んでいる。ただし、線路の軌間が異なる区間もある。これらや事業費の負担割合など課題は多いのが実情である。
新空港線の新設 |
空港関連プロジェクトの4つ目は、京浜急行空港線の羽田空港国内線の引き上げ線の新設だ。終着駅である国内線ターミナル駅からさらに路線を500m延伸する。これによって折り返し運転の効率が高まる。同時に品川駅のホームも2面4線化することによって増発を可能にする計画である。すでに都内や周辺の各地からは鉄道のほか、バスなど複数のアクセスが整備されている。しかし、拠点の駅などへは乗り換えを伴うケースが多い。空港利用者は、海外旅行では大きなスーツケースを持参するなど乗り換えにも不便を伴う。
京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設 |
直通のルートが整備されれば、空港利用者の利便性は大幅に向上する。移動時間の短縮にもつながる。各プロジェクトとも事業者間の調整や事業費など課題は多いが、今後の進展が注目される。
(2018年5月時点)
※図版の出典:国土交通省 東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会