2018.11.12

国際コンテナ戦略 港湾③

 

 港湾の背後地に流通施設を整備する


 

 

コンテナの需要をいかに増加させて、輸送船のわが国への寄港を維持すると同時に拡大させていくか。

 

国際コンテナ戦略港湾政策の3本柱の2本目が「創貨」である。具体策の1つが港湾の背後地に物流施設を整備することであり、国も支援策を打ち出している。

 

神戸港では、港湾機能高度化施設整備事業と呼ぶ物流拠点を再編したり高度化するための国の補助事業を活用して、施設整備に取り組んできた。

 

複数の事業者が更新したり整備する物流施設の供用部や共同施設の費用を国が3分の1補助するものである。

 

神戸市の沖にある人工島のポートアイランド地区で延べ1万9,000m2の施設を建設したのに続き、第2期では2万1,000m2と合わせて延べ4万m2に及ぶ。

 

さらに隣接する人工島の六甲アイランド地区では、特定用途港湾施設整備事業を活用して延べ8,200m2の施設を建設した。

 

 

神戸港 国際海上コンテナターミナル整備事業の進捗           出典:国土交通省

 

 

 

流通加工機能を備えた物流施設の費用の一部を国が無利子で貸し付ける。その負担割合は国が3、港湾管理者が3、施設を利用する民間事業費が4である。

 

これらの保管スペースや流通加工機能を備えた物流施設がふ頭の近くの新設されることによって、工場から輸出用品の受け入れが増加して神戸港での創貨効果が発揮されると見込まれている。

 

 

 

   再開発と連携して老朽施設を移転

 

 

横浜港 山下ふ頭再開発               出典:国土交通省

 

 

横浜港の創貨機能の強化                        出典:国土交通省

 

 

 

横浜港では、創貨機能を大幅に増加させるための再開発が進む。民間投資の誘発が大きな目的であり、山下ふ頭の再開発と連携して実施する大規模事業である。

 

対象となる面積は約47ha。山下ふ頭にある老朽化した既存の倉庫を沖合の南本牧や本牧ふ頭、新山下地区へと移転して物流加工機能がある倉庫に建て替える。

 

移転跡地の山下ふ頭は、観光などを中心にした賑わい拠点へと整備していく方針である。大規模な開発空間に加えて横浜駅に近く、景観性もあるといった特性を活かして魅力的な集客施設を導入して新たな賑わい施設を形成していく方針である。東京オリンピックが開催される2020年に約13ha のエリアについて一部供用を予定している。

 

 

 

   増加傾向にある農林水産物の輸出

 

農林水産物や食品の輸出促進策にも取り組んでいる。そのために開発されたのが、鮮度を保ったまま長時間の海上輸送を可能とするリーファーコンテナと呼ばれるものである。コンテナ内の窒素濃度を上げて、酸素濃度を低く一定に保つことによって青果物の呼吸を最小限にして鮮度を維持するというものである。

 

非熱電場技術コンテナと呼ばれるものも開発された。コンテナの内部に高電圧をかけることによって殺菌効果のあるオゾンを発生させる。同時に電場によって発生する微弱な振動により、0度を下回って凍結させることなく鮮度を維持して輸送することができる。

 

農水産物は、輸出の成長分野であると見込まれている。輸出額は増加の一途であり、1兆円に達している。その8割以上がコンテナを利用している。

 

 

   

出典:農林水産省、貿易統計、平成25年全国輸出入コンテナ貨物流動調査に基づき国土交通省作成

 

 

 

国でも戦略的に輸出に取り組む港湾を対象にして施設整備の支援策を実施している。港湾管理者が輸出促進のための行動計画を策定し、国土交通省が認定した場合には、補助する制度だ。

 

対象となるのは、港湾での輸出拠点となる小口貨物の積み替え円滑化支援施設やリーファーコンテナに必要な電源供給設備の整備。さらに水産業が集約している港湾では、輸出競争力強化のために必要となる屋根付き岸壁などがある。

 

これらの複数の施策を組み合わせて実施することによって「創貨」に取り組んできている。

 

                               (2018年11月時点)