2018.11.12
全国から拠点港湾に荷を集める「集荷」
出典:国土交通省 |
船舶の大型化などに対応するために国が打ち出した国際コンテナ戦略港湾政策の3本柱が、広域から貨物を集約することなどによる「集荷」、港の背後地に産業を集約させることによる「創荷」、そして港としての機能を高める「競争力強化」である。
第一の集荷は、文字通りコンテナ船に積載する荷物を集めることであり、まず実施したのが国内の港湾運営会社に集荷事業の一部を補助する国際戦略港湾競争力対策事業である。
国内の複数の港に分散していた荷物を京浜港と阪神港の国際コンテナ戦略港湾に集約させる。
このための国内航路の維持や拡大のための事業や渋滞対策事業に対して2分の1を補助する。外航や国内航路の事業者のほか、荷主が対象となる。
政策の実施にともなって集荷が進んだ結果、例えば神戸港では、2017年のコンテナ貨物取扱量が国内外合わせて約292万TEU(※1) となり、阪神・淡路大震災以降最高を記録した。
国際コンテナ戦略港湾のコンテナ取扱貨物量推移 出典:国土交通省 |
戦略港湾に寄港する国際フィーダー航路(※2) と呼ばれる便の寄港数も増加している。
西日本の諸港では週68便から99便へと約5割増加し、東日本の諸港でも33便から43便へと約3割増加している。
内航コンテナ船の新造などの新規投資も |
国内の内航船会社の動きも活発になった。大型内航コンテナ船の新造など新規投資事業を誘発する効果も生み出している。
国内初の大型内航コンテナ船の投入を皮切りにして、新造船に合わせて169億円を投資し、13船を投入した会社もある。
国内初の209TEU型コンテナ船の投入を受けて、2016年には高知港にとって初めてとなる国際フィーダー航路が開設された。阪神港を中心に高知、九州航路による集荷が実現した。
京浜港では大型内航船の投入によって、輸送能力が最大で2倍に増加。北海道や東北からの集荷が増強され、さらに増船も進んでいる。
集荷の対象は国内だけではない。国際基幹航路のわが国への寄港の維持拡大を推進していくためには、高い経済成長などを背景にして増大している東南アジアの貨物も対象となる。
その量は年間に441万TEUに達し、このうち直航貨物を除く約4分の1の113万TEUがトランシップ貨物(※3) と呼ばれるもので、これを取り込む計画である。
アジア広域集荷事業を活用して東南アジア~北米間で輸送されている貨物を国際戦略港湾へ集荷することを促進して、北米基幹航路の維持拡大を図っていく構想である。
これに向けて、わが国の国際港湾関係事業者の進出も加速しており、例えばインドネシアには物流施設がすでに建設されている。
官民が一体になった取り組みも進む。2017年には、アジア広域集荷プロジェクトチームが設立されている。
アジア諸港でのトランシップとして東南アジア~北米間で輸送されているコンテナ貨物を阪神港に取り組むための検討を進めるものである。
東南アジアには日本企業も多く進出していることなども背景にはある。物流事業者や荷主、国土交通省港湾局、近畿地方整備局、阪神国際港湾会社、神戸市で構成し、2017年3月に初会合を開き、2、3ヵ月に1回程度開催して実現策を協議していく。
国内での集荷についても国が中心となって港湾運営会社と連携して全国の荷主への働きかけを強化している。
地方整備局の職員が、直接荷主を訪問して協力を依頼しているほか、京浜、阪神港への集荷を目的とした荷主を対象にした説明会も開催している。
実績の一例としては、2014年度に800社を訪問して80社と契約、2015年度は1,000社に対して110社、16年度は1,400社に対して210社など増加を続けている。
国では、オールジャパン体制での集荷を図るため港湾管理者や港湾運営会社との協議会も開催している。
東日本と西日本で地方整備局が中心になって、地域全体の効率的で安定的な国際コンテナの物流を実現させるための意見交換や情報共有などを通じて政策の推進策を協議している。
※1 TEU:サイズが異なるISO基準のコンテナのうち20フィートコンテナを1とした単位
※2 国際フィーダー航路:基幹航路の主要港とその他の港を結ぶ2次輸送を行っている航路
※3 トランシップ航路:貨物を外国の港に一旦運んで目的地への基幹航路に積み替えるた
めの航路
(2018年11月時点)