2019.09.19
金沢~敦賀間の開業を前倒し
2015年に金沢まで開業した北陸新幹線。富山や石川では観光客が増加するなど経済効果も発揮している。金沢以西は敦賀まで建設中で、開業の前倒しも決まった。さらに敦賀以西は懸案だったルートは決定したが、予算の確保を含め事業の実施時期が新たな焦点となっている。
長野冬季五輪に向けて長野開業を先行 |
北陸新幹線は、東京から長野、富山、金沢、福井、京都を経て大阪に至る総延長が700kmで、うち東京~高崎間の105kmは上越新幹線と併用している。計画は1973年にまで遡る。全国鉄道整備法に基づいて国の整備計画が決定した。長野冬季オリンピックに向けて1997年に高崎~長野間が開業し、東京~長野間の直通運転を開始した。その後15年3月に金沢まで開業している。
継続して金沢~敦賀間が建設中で2025年度に予定して開業を3年前倒しして2022年度にすることを政府・与党は決定している。
敦賀~大阪間については、米原、湖西、小浜の3ルートがあり、決定に時間を要していた。これに対して、2015年にJR西日本が「小浜・京都ルート」を提案し、2016年12月の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームで決定されたという経緯がある。さらに、京都~新大阪間については、4ルートが候補に上がっていたが、2017年3月に東海道新幹線の東側を走る「南回りルート」に決まった。しかし、敦賀以西はようやくルートが決まっただけで、着工や開業時期は不透明だ。
金沢~新大阪間を含めて北陸新幹線は、国が決めた「整備新幹線」であり、長野~金沢間と同様に鉄道・運輸機構が建設して保有し、営業主体となるJRに貸し付ける。建設中の金沢~敦賀間の事業費は約1兆8000億円で、敦賀~新大阪間は概算で2兆1000億円に上るとみられている。
金沢~敦賀間は、開業時期も明確になり、予算も確保されているが、敦賀~新大阪間は確保されてはいない。想定される建設期間は約15年。整備新幹線については、北海新幹線の札幌までの区間を先行整備しており、札幌開業後に予算が確保できて建設に着手したとしても開業は2046年以降になると見られている。
東海道新幹線の代替えルートにも |
わが国の高速鉄道網などの国土政策は、太平洋側を中心に進められてきたが、北陸新幹線は、発生が懸念されている大規模地震など自然災害発生時の代替えルートとなるほか、東海道新幹線とともに東西交通のネットワークを形成する。
経済効果もある。高崎~長野間開業後の経済波及効果は、駅を中心にした新しい市街地の形成が進むなどして10年後には年間1350億円に上ったという統計もある。現在建設中の敦賀まで開業すれば、三大都市圏との交流人口が1.6倍に増加し、経済波及効果は北陸全体で年間約800億円、約7200人分の雇用創出効果があると試算されている。
金沢までの開業で東京~金沢間は2時間28分と従来の上越新幹線を利用して越後湯沢で在来線の特急に乗り換えていた場合に比べて1時間19分短縮された。航空機での所要時間も下回った。敦賀まで開業すれば、東京~福井間は、3時間52分。東海道新幹線を利用した米原経由に比べて、36分短縮されることになる。沿線の日本海側には観光名所も多い。金沢開業で北陸旅行が注目されたように、さらに観光客が増加するものと地元では期待している。
(2019年9月時点)