2019.07.24
市街地再開発事業を活用した選手村
民間事業者のノウハウも生かす
競技場とともに五輪開催で不可欠な施設が選手村である。東京都が主体となって中央区晴海に整備している。
開催中は選手だけでなく、コーチなど競技関係者も宿泊する施設、さらに報道関係者向けのメディアゾーンなど多目的な空間になり、広い敷地が必要になる。大会終了後はマンションなどとして利用される計画である。
東京オリンピックの競技種目は33競技、339種目と史上最多であり、参加選手数は最大で1万2,000人とすることが、IOC(国際オリンピック委員会)との間で合意されている。これに加えて選手村は役員やコーチなども利用することになる。
前回の1964年大会では、渋谷区代々木に選手村が整備され、宿舎は木造住宅が249棟543戸、鉄筋コンクリート造の4階建てアパートが14棟などを建設し、収容人員は5,900人だった。これ以外は、競技に応じて八王子や軽井沢などに分村も整備された。
代々木は総面積が66万m2あり、大会終了後は代々木公園として再整備された。さらに、集合住宅は改修後にオリンピック記念青少年センターとなった。
アクセスも有利な臨海部の晴海地区 21棟に1万8,000ベッドを確保 |
これに対して2020年大会は、競技種目、参加人員ともに前大会を大幅に上回ることから選手村も大規模になる。
そこでウォーターフロントの晴海にした。敷地は総面積が44ha。宿泊施設としてオリンピック時に1万8,000ベッド、パラリンピック時には9,000ベッドを確保する。
羽田空港から20分程度の距離にあり、各競技会場から近く、選手への移動の負担が少ないことなども選定理由の一つだった。
宿泊施設となる住宅棟は、市街地再開発事業によって整備される。また、将来は商業棟として利用する建物や大会後に移築される学校予定地、客船ターミナルなどには大会のための運営施設、選手利便施設などが仮設によって建設される。
ゾーニングは大別して居住ゾーン、オリンピック・パラリンピックのファミリーやメディア関係者などのためのオリンピックビレッジプラザ、ゲストパスセンターやメディアセンターなどからなる運営ゾーンによって構成される。
宿泊施設は4つの街区に分けて建設される。いずれも鉄筋コンクリート造の板状棟で、地下1階、地上14~18階建までの建物が合わせて21棟である。
街区内の道路や下水道などのインフラの基盤整備事業は東京都が実施する。
宿泊施設として一時利用する建物は、施設建築物の施工を民間事業者が実施することができる特定建築物制度と呼ぶ方法を利用して民間の資金力やノウハウを積極的に活用する。大会終了後は、賃貸や分譲の民間マンションになる。
環境性能の高い街にすることも目指している。エリア内には水素ステーションを整備、空気中の酸素と水素を反応させて発電する次世代型燃料電池を商業棟や住宅の共用部に設置するほか、再整備する各住戸には家庭用燃料電池も設置する予定だという。
人口過疎地から環境性能重視の街へ 持続可能な成熟都市のモデルへ |
選手村 建設中(2019年5月) |
中央区の人口は、約9.3万世帯、約16.5万人。このうち選手村予定地の晴海4丁目と5丁目は、世帯数が約900、人口約1,900人にすぎない。
大会終了後には、50階建ての超高層タワーマンションが建設される計画もあり、小学校が移設され、商業施設も整備されて、将来人口は1万人を超える。人口の過疎地から大会後には高い環境性能を備えた街へと生まれ変わることになる。
ライフスタイルの変化や様々なニーズに対応できるバリエーションのある住戸を確保する。サービス付き高齢者向け住宅のほか、若者向けのシェアハウス、外国人向けのサービスアパートメントも予定している。持続可能な成熟都市のモデルとして整備していく。
(2019年7月時点)