2019.02.28
豊かな暮らしの礎となる地域づくり
地域の魅力や資源を活かす |
都市や地域間の格差をなくし、等しく成長していくために従来から取り組んでいるのが地域の活性化である。
これをさらに推進するのが4つ目の重点課題である「豊かな暮らしの礎となる地域づくり」だ。
テーマは3点。
まず都市機能の誘導・集約や持続可能な公共交通ネットワークなどの実現によるコンパクト・プラス・ネットワークと呼ぶものである。
次が、空き家や空き地対策を進めて地域の魅力や資源を活かして個性と活力を追求する。
そして、多様なライフステージに対応して誰もが豊かに暮らせる住環境を整備していくことである。
中心市街地を活性化して賑わいのある街にする。都市機能を集約するコンパクトシティの推進に3%増の179億円を計上した。
集約することによって密度の経済効果を発揮させ、地域経済を活性化しようとするのが、コンパクト・プラス・ネットワークである。
2018年8月現在で420都市が計画の策定に取り組み、177都市がすでに計画を公表している。
地方都市だけでなく、山間部でも廃校を雑貨店や診療所、保育所に活用するなど周辺集落とのネットワークによる小さな拠点づくりも計画されている。
これらを道路ネットワークで結んで広域的な経済や生活圏を形成していく。予算額は4%増の2,867億円(再掲)である。
高速道路のネットワークに加えてインターチェンジ(IC)へのアクセス道路を整備。スマートICを活用して地域の拠点などに直結できるようにすることで経済を活性化し産業を振興する。小さな拠点となる道の駅の整備も支援する。
地方では、車社会が進むことによって公共交通機関の便数が減少したり路線そのものが廃止されたりしている。
活性化のためには、持続可能な地域の公共交通ネットワークが不可欠であり、対応策として7%増の255億円を計上している。
人口減少や高齢化の進展も踏まえて関係者と連携し、ICTなどの新技術を活用して実現に向けた取り組みを推進していく。
各分野が連携した貨客混載のほか、マース(MaaS)と呼ばれる概念も登場している。
出発地から目的地までの移動を鉄道やバスのほか、観光案内、飲食店の検索・予約といったサービスを追加して付加価値を高める。
すでに民間主導で進んでおり、国土交通省でも懇談会を開催して今後の取り組みについて検討していく方針である。
個性的で活力のある地域をいかに形成していくか。その対策の一つが地域資源を活かしたまちづくりである。
予算額は7%増の293億円。歴史や景観のほか、残されている豊かな緑地や農地を活用する。地方自治体が実施する魅力あるまちづくりを支援していく。
少子高齢化と人口減少に対応した住宅政策 |
人生100年時代と言われるようになってきた。
生活の拠点となる居住環境をいかに整備していくのか。
対応策の一つが既存住宅の流通とリフォーム市場の活性化である。
少子高齢化、人口減少の急速な進展などによる空き家問題の深刻化を踏まえて、良質な住宅のストックが適正に評価されて流通する仕組みや長寿命化、省エネ化などのリフォームを支援する。
高齢者だけでなく、若者や子育て世代が安心して暮らせる住まいの確保が3%増の1,189億円である。
複数の支援策を実施していく。入居者の高齢化が進む公的賃貸住宅の建て替えや改修と合わせた生活支援施設の導入。
サービス付き高齢者向け住宅の整備も促進する。三世代同居などに対応した整備、リフォーム向けの支援もある。
子育て世代に対しては、地方公共団体と協調して金融支援策を実施していく。
住宅関係では、このほか10月の消費税引き上げに伴う住宅の需要変動への対応に2,085億円を当てる。
需要の平準化策として、すまい給付金の対象となる所得階層を拡充して給付額を最大50万円に引き上げる。
一定の省エネや耐震、バリアフリー性能を満たしたり家事を軽減する住宅に対するポイント制度を創設することにしている。
新年度予算を振り返って見ると、目玉となるようなプロジェクトは影を潜めている。かねてから言われているように新規から維持管理へ移行している。
しかし、地方に目を向ければ地域活性化のための多彩な事業が盛り込まれている。国も支援策を打ち出している。これらに沿って今後、地域活性化に向けてどのような事業が展開されていくのか注目される。
(2019年2月時点)