2019.07.24

2020 東京オリンピック・パラリンピック④

 

 チケットも発売され高まる開催ムード
 600万人を超えたIDの登録者


 

 

チケットの発売が開始されるなど開催日程が刻々と迫ってきた2020 東京オリンピック・パラリンピック。

 

会場の施設整備も随所で最後の山場を迎え、聖火コースの発表に続いてランナーの募集など開催ムードが高まっている。

 

まず話題になったのが、インターネットによるチケットの抽選申し込みだった。アクセスが殺到して長時間待ちのケースもあり、大会組織委員会は、5月28日午後11時59分としていた締め切りを翌日昼まで延長する一幕もあった。

 

申し込みの受け付けは、5月8日から始まり、27日の夕方ごろからアクセスが集中して、1時間半待ちのケースもあったという。申し込みに必要なIDの登録者は600万人を超えた。抽選結果は、6月20日に発表された。今後は、秋からネットでの先着販売が始まり、来年春には都内の販売所で購入できるようになる。

 

ちなみに価格は、最も高額な開会式が1万2,000円~30万円、閉会式が1万2,000円~22万円である。競技は当然のことながら予選から決勝に進むに従って高くなり、陸上競技の決勝が5,800円~13万円、水泳(競泳)の決勝が1万1,800円~10万8,000円といずれも席によって大きな差がある。高額な席ほどプラチナチケットになると見られる。

 

 

 

   官民の設備投資に加え国内外からの観戦者
 約32兆円との試算もある経済波及効果

 

競技そのものに加えてオリンピックの開催で期待されるのが、経済効果や開催を契機とした成長戦略の推進である。高度成長期に開催された前回の1964年の東京オリンピックでは、東海道新幹線が建設され、首都高速道路の整備なども進みオリンピック特需と呼ばれた。

 

今回もその効果に期待が掛かり、早くから試算も出ている。経済効果には開催によって生じる新規需要、生産や雇用の誘発などによる直接効果と付随効果がある。さらに、それぞれ開催前、開催中、開催後の3つの局面がある。

 

直接効果としては、競技場や選手村など建設投資、オリンピック関連グッズのほか家電といった消費支出がある。例えばテレビは、現在のデジタルハイビジョンを上回る高画質の4K、8K放送が開始されており、買い替え需要のきっかけになるとみられる。

 

観戦者の宿泊、交通、飲食に加えて、国内、海外を含め観光面での支出もある。付随的な効果としては、公共インフラの整備のほか、ホテル、商業施設など民間設備投資の活性化などだ。

 

これらについては複数の機関が試算しており、招致委員会では2012年当時、約2兆9,600億円の経済波及効果があるとし、雇用については約15万2,000人の誘発があるとした。その後に東京都が2017年3月に発表した試算は、招致決定の2013年から大会10年後の2030年までの経済波及効果が東京都で約20兆円、全国で約32兆円に上る。雇用については、東京都で約130万人、全国で約194万人の誘発数があるとし、いずれも招致段階を大きく上回る。

 

オリンピック特需には違いないが、重要なのは開催後も効果を持続させていくことである。建設投資は減少する。一方で、訪日外国人は、政府が目指していた2020年での2,000万人という目標達成はほぼ確実であり、オリンピックを契機として観光需要をさらに拡大していくことが求められる。

 

わが国全体の観光資源の魅力をアピールし、開催地の首都圏だけでなく、地方にも訪れるようなルートを整備、提案するなど、息の長い需要の増大につなげていくことが重要になってくる。

 

 

 

   5年後の2025年には大阪で万国博覧会
 前回に続いての東西でのW開催に

 

5年後の2025年には、大阪で万国博覧会の開催されることが決まった。前回の1964年のオリンピック後にも1970年に大阪万国博覧会が開かれている。東京のオリンピック、大阪の万博のW開催となる。

 

万博会場は、大阪湾を埋め立てた大阪市の夢洲(ゆめしま)で、5月3日から11月3日までの185日間の期間中に国内外から約2,800万人の入場者があると想定。2兆円の経済波及効果があると試算されている。

 

さらに夢洲では、ホテルやショッピングモール、カジノなどの統合型リゾート(IR)の建設が計画されている。オリンピックでの観光需要の増大を万博に引き継ぎ、IRで継続的なものとする。日本への注目が高まり、新たなビジネスチャンスになる可能性もある。これらの連携によって、発展が継続していくことに期待が掛かる。

 

 

 

   招致当時から原点としてきた被災地の復興
 聖火リレーも福岡を出発して全国を巡る

 

オリンピックのもう一つの大きな役割が復興である。2011年に始まった招致活動では、スポーツの力が東日本大震災の被災地に夢と希望をもたらすと訴えてきた。

 

開催決定後には、熊本県でも大地震が発生した。被害は甚大そのもので、復興途上にある。多くの困難を乗り越えて復興した姿を世界に発進し、支援への感謝を伝える。復興は今回のオリンピックの原点でもある。

 

被災地では、サッカーと野球、ソフトボールの競技が開催されるほか、ライブサイトや文化プログラムも予定されている。

 

宮城スタジアム(サッカー会場)

福島あづま球場(野球・ソフトボール会場)

 

 

 

さらに被災地と全国の絆を深めるため、青森から東京まで東日本大震災の被災地をランニングと自転車でつなぐ1,000㎞縦断リレーの企画も組まれた。聖火もまず被災地に到着する。

 

2020年3月12日にテヘランのヘラ神殿跡で採火された後、ギリシャ国内でも8日間リレーされ、アテネ市で大会組織委員会に引き継がれる。日本に向かった聖火は、宮城県にある航空自衛隊松島基地に降り立ち、宮城、岩手、福島の被災地3県で「復興の火」として順次展示される。

 

その後、3月26日に福島県を出発。移動日を含めた121日間という長期間をかけて全国47都道府県をリレーし、最後に東京都に入り、7月24日の開会式を迎えることになる。

 

                                 (2019年7月時点)