国交省がインフラ分野の DXアクションプラン(第2版)を策定 |
日々進化する情報通信技術(ICT)の活用によって建設現場の生産性向上を図ろうと国土交通省が打ち出したi-Construction。この取り組みを中核としつつ、データやデジタル技術の有する利点をさらに生かすことで、インフラ関連の業務、組織、プロセス、文化・風土や働き方の変革につなげようと、同省は「インフラ分野のDX(デジタル・トランスフォーメーション)」を強力に推進している。2020年7月に設置された「インフラ分野のDX推進本部」は同省が所管する各分野の施策を洗い出し、2023年8月に「インフラ分野のDXアクションプラン(第2版)」を策定した。この第2版は前年度に策定した第1版の単なる改訂版ではなく、「ネクストステージへの深化」を志向したものとなっている。
各部局の施策を3分野に分類 |
「インフラ分野のDXアクションプラン」は、国土交通省の所管する各分野における施策を洗い出し、インフラ分野のDXを推進するための取り組みなどにより「利用者目線で実現できる事項」を取りまとめたもの。第1版では、①行政手続きのデジタル化、②情報の高度化とその活用、③現場作業の遠隔化・自動化・自律化 の3つの柱を目指すべき方向として計53の個別施策を掲げ、それぞれの担当部局を中心にDXの実現に向け、施策の具体化に取り組んできた。実現を目指す将来のイメージとしては、①自宅や事務所からいつでも手続き等が実施できる、②3次元データによるコミュニケーションの推進により関係者間の正確でリアルな情報共有が可能になる、③現場にいなくても現場管理が可能になることを指標にしている。
これに対し、第2版ではインフラ分野のDXの一層の推進に向け、「利用者目線で実現できる事項」を①インフラの作り方の変革、②インフラの使い方の変革、③データの活かし方の変革 の3つの分野に分け、各部局の施策のうち計86施策について、分野網羅的、組織横断的な取り組みの視点から「インフラ分野のDXアクションプラン」を取りまとめている。
インフラの作り方の変革:
インフラの建設生産プロセスを変革する取り組みが対象となる。インフラ建設現場の生産性・安全性の向上に向け、i-Constructionで取り組んできた施策をより高度化し、より良いインフラをつくっていくことを目指す。
インフラの使い方の変革:
インフラの「運用」と「保全」が対象となる。「運用」ではインフラ利用申請のオンライン化や書類の簡素化に加え、デジタル技術を駆使して利用者目線でインフラの潜在的な機能を最大限に引き出すことなどに取り組む。「保全」では最先端の技術等を駆使した効率的・効果的な維持管理などに取り組む。これらの取り組みを通じて、賢く(Smart)かつ安全(Safe)で持続可能(Sustainable)なインフラ管理の実現を目指す。
データの活かし方の変革:
「国土交通データプラットフォーム」が中核となる。データの標準化、技術開発・環境の基盤整備(ネットワーク、通信環境等)、データの収集・蓄積・連携、利用者・国民への発信など、インフラまわりのデータを徹底的に活かすことを目指す。
インフラDXマップを作成 |
DXアクションプランを「インフラの作り方の変革」「インフラの使い方の変革」「データの活かし方の変革」の3分野に振り分けたのは、インフラ分野のDXの実現に向けた様々な取り組みを利用者目線から見た場合に、「さらなる取り組み強化が求められている分野」がないか、「今後充実させるべき分野」はどこかの検討をしやすくするのが狙いという。このため第2版では、DXアクションプランに位置付けられている個別施策(86施策)を3つの分野に分類した上で、各施策に「どのデジタル技術が利用されているか」を一目でわかるように整理し、「インフラDXマップ」を作成した。
具体的には、インフラDXマップの縦軸に①インフラの作り方の変革として「設計」「設計・施工」「施工」、②インフラの使い方の変革として『運用』で「インフラ施設の管理・操作」「交通施設の運用・自動運転」「除草・除雪」「災害把握・復旧」「書類・手続き」および『保全』、③データの活かし方の変革として「データの標準化」「技術開発・環境の基盤整備」「データの収集・蓄積・連携」「利用者・国民への発信」を列挙。横軸のデジタル技術には、建設業界や他分野で適用が進んでいるドローン・センシング・人工衛星や画像などの「データ取得技術」、ノイズ除去・変換などの「データ整形・管理技術」、統計分析や機械学習・AIなどの「データ分析・処理技術」、「通信・セキュリティ技術」、3次元での可視化やAPI連携・データ提供などの「データ利活用技術」を列挙した。
このインフラDXマップを見ると、特に交通施設の運用・自動運転や災害把握・復旧などでドローンやセンシング、人工衛星を活用し高精度・高頻度な「データを取得する技術」が多く活用されていることや、ICT施工、パワーアシストスーツ、遠隔臨場など「データを機械・設備へ活用する技術」も幅広く利用されていることが分かる。
一方で、他分野の取り組みを参考にしながらインフラ分野への導入を加速していくべきデジタル技術があることから、同省では各部局が連携し、デジタル技術のさらなる活用に向けて知識・経験の集積や先行的な取り組みの情報収集を進めていく方針だ。
デジタルツインの可能性 |
デジタル技術をめぐっては、スマートフォンをはじめとしたデバイス機器の急速な普及と、大容量・低遅延・多数同時接続を可能とする5G通信環境の整備、さらにビッグデータの集積といった技術革新が驚異的なスピードで進展していることが、インフラ分野のDXの実現を後押ししている。
製造業を含め幅広い分野で活用が進むデジタル技術の一つとして注目を集める「デジタルツイン」は、仮想空間上に現実空間と全く同じ環境を“ 双子” のように再現するシミュレーション技術であり、試作期間の短縮やコスト削減、品質の向上、リスク低減のほか、予知保全や、遠隔での作業支援、技能伝承などにも適用が可能という。
一品生産の建設業においても、仮想空間に仮の構造物を試作することで、デザインの変更や施工手順の検討などが可能となり、施工品質の確保や安全性の向上など多くのメリットが見込まれている。国土交通省が主導する3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」も都市のデジタルツインであり、様々なデータを可視化することで、防災・減災やスマートな街づくりなどへの展開が期待されている。
「デジタルツイン」は、仮想空間で分析・シミュレーションした結果を現実空間にフィードバックし、これまでの事業の進め方などを見直していくことで「初めてその恩恵を広く享受することができる」(インフラ分野のDX推進本部)ものと言える。将来へ向けた変革の成否は、まさにデジタル技術の「活かし方」にかかっている。
現場見守る君 スタンダード
主任技術者1人で現場管理が遠隔地のカメラからネット回線経由で映像で一度に複数できる技術。従来は、主任技術者1人で一度に一つの現場管理に限られていた。本技術の活用により、主任技術者1人で一度に複数の現場管理が可能になり、省人化し施工性が向上する。
E 三・K/3D・SEDA
3D データ作成などを支援する事務所用のソフトウェア「SEDA-office」と現場測量が簡単にできる「SEDA-mobile」を搭載したAndroid 端末、自動追尾TS(LN150)、「E 三・K」(バックホウのバケットに取り付ける装置)からなる。
スマートアジテーター®
「ドラム内の生コン性状記録管理装置」や「GPS位置情報システム」、「IP無線機能(オプション)」、「出退勤管理機能」等、様々な機能を搭載した複合型車両運行管理が可能なシステム。荷卸しを必要としないクラウド型品質管理システムが、コンクリート工事における積載中のコンクリート品質・車両状態の即時情報共有を可能にする。 2023年1月16日、(一財)日本建築総合試験所『建設材料技術性能証明(GBRC材料証明 第22-04号)』取得。
iDig + 準平くん
iDig +準平くん(3DMG 後付け装置)は中小規模土工向けの3D マシンガイダンスとして小規模工事ICT 施工、それぞれの機器の普段使い等、現場の状況に合わせて活用できる。 全面的なICT 活用工事ではなく、身近な作業を効率化することが可能で手持ちの小型建機に後付けが可能。 建設現場に求められるICT 化に対応するため、普段はそれぞれの機器として使用しながら必要な時だけ組み合わせる事ができ、ローコスト3D マシンガイダンスとして使用可能。 iDig +準平くん(3DMG 後付け装置)はICT 建設機械認定制度に登録されている。
かんたんマシンガイダンス
舗装修繕工における路面切削機やアスファルトフィニッシャの情報化施工技術(マシンガイダンス)。