新規性
従来、河川の予測モデル(物理モデル)を作成するには河川の測量、水位・流量関係式の構築等に多大なコスト(数千万から1億以上)と期間(約1年)を要していた。リアルタイム洪水予測システム(RiverCast)では、過去の水位・雨量データがあれば、1ヶ月程度で水位予測モデルが作成でき、モデル構築にかかる期間とコストを大幅に削減することが可能となる(期間:約 1/12、コスト約 1/6 以下)。これにより、今まで導入を断念していた中小河川でも導入を検討することができるようになった。またAI(人工知能)モデルでは、学習データにない未経験の洪水規模についての予測が不安定になる場合があるが、リアルタイム洪水予測システム(RiverCast)は、先端的な非線形時系列解析手法を取り入れており、これまで経験したことのない想定外の降雨に対する予測が可能となった。
期待される効果
災害対策を時間軸で考えると「事前」、「直前」、「事後」の3つに分けられる。(株)構造計画研究所が過去に手掛けた防災分野の事例では、数値シミュレーションに基づく地震時の建物被害予測など「事前」対策としての予測技術であった。それに対し、リアルタイム洪水予測システムでは「直前」(リアルタイム)の予測技術を確立し災害対策ソリューションとして同社初のクラウドシステムとして予測システムの提供を実現。リードタイム(いつ、どこで、どのくらいの危険が迫っているか)を見える化、合理的な意思決定を早期に行えるよう支援する。これまでは、現場の熟練者が天気予報や河川水位の現況を見て勘で行う重機退避や作業員避難などの安全管理を、定量的に行うことが可能となった。判断のきっかけの数的根拠が残せ、被災時の避難判断の妥当性を発注者に説明できることも大きなメリット。定量データがあれば、事前に退避計画などを発注者と調整可能。
適用条件
適用条件としては、インターネット端末からクラウドサーバーへのアクセスが可能なネットワーク接続環境であること。適用場所は、河川改修工事、橋梁工事など河川近傍で行われる公共工事。これまでにない画期的な予測システムとして、リリース前から注目され、現在では、全国13自治体、多くの民間企業で実績がある。地域防災計画や河川、遊水地施設の管理、河川工事現場の安全管理など、さまざまな場面で活用されている。さらに国土交通省の発注工事では、100件以上の入札技術提案に採用されており、今後、本システムの導入が加速化される予定である。今後は、洪水予測だけでなく、さまざまな物理現象に応用可能。例えば現在、(株)構造計画研究所では高潮の予測に対する技術開発を行っている。港湾施設等への高潮予測などの提供が可能となる見込みである。また水位予測結果を用いて水門・樋門や排水機場などの自動運転などにも展開を考えている。
特許番号:特許第7021732号
特許権者: 国立大学法人東京大学、株式会社構造計画研究所
実施権者:株式会社構造計画研究所