新規性
A.浮遊砂流量
浮遊砂流量の計測は、断面流速分布と、断面の濁度(もしくはSS)分布を乗じて求めることが出来る。断面流速分布計測はADCPの基礎的な技術であり、正確な流速分布が得られる。一方、断面の濁度(もしくはSS)分布は、ADCPの超音波反射強度を利用する。超音波の反射強度は、水中の懸濁物質の量に相応して強度が強くなる性質があるが、絶対値への変換精度が課題であった。当社開発ソフト(VA4)では、水塊による吸収や減衰などの理論式をあてはめて、濁度もしくはSS濃度の絶対値に変換する機能を実装した点が新しい。精度良く算出するためには、河道内で3点ほどの濁度比較データが必要となるが、これも将来的には不要となる研究を進めている。
この様に、断面の流速分布と濁度(もしくはSS)濃度が得られるため、両者を掛け合わせることで、単位時間当たりの断面の浮遊砂流量(SS Flux)が算出できる。
B.掃流砂量
掃流砂量は川底を流れる砂の量であり、実測で把握するのは極めて困難とされてきた。
一方、ADCPでは川底を流れる砂の移動速度を計測することが可能である。この技術は、ADCPのボトムトラックと、VRS-RTK-GNSS機能を利用する。川底が移動した際はボトムトラック機能は川底の動きを計測する。一方VRS-RTK-GNSSは実際にADCPが移動した正確な航跡を記録する。両者の差分が流砂速度であり、詳細な横断分布が得られる。
次に、これを水理公式(江頭らの式)にあてはめ、本来未知のパラメーターである川底表面の移動速度に対して、本システムで得られた実測値を与えることによって、掃流砂量を算出できるようにした点が新しい。
期待される効果
・ADCPによる流量観測と同時に、浮遊砂量、掃流砂量が得られるため、簡便にこれら土砂情報を得ることが出来、観測品質の向上および施工性の向上。過去のADCP観測データを利用して、これら浮遊砂量、掃流砂量を算出することも可能である。
・ADCPによる流量観測機材のみで複数観測でき、遠隔操作により現場観測員を削減できるため労務費が減少し経済性の向上とともに、工程短縮が期待できる。
適用条件
①自然条件
・風速:人が橋上で作業できること
・水深:0.4~60m ※機種(周波数)選定に依存
・気温:-5℃~+45℃(稼働環境)
・雨天時:防水・防滴構造
②現場条件
・橋下流側に観測可能な歩道等があること
・橋下流側に構造物(例:トラス橋)がないこと
・ADCP横断箇所に構造物がないこと
・橋上から左右岸際までADCPが横断できること
・構造物等によって気泡が発生しないこと
・インターネット環境に接続できる場合は、遠隔地からのオペレーションとデータ転送が可能。インターネット環境に接続できない場合は、内蔵記録可能。
・RTK測位ができること
・作業面積:歩道幅1.5m×川幅400m=600m2(川幅により変動)
③技術提供可能地域
全国・海外も可能(とくに制限なし)
④関係法令等
特になし