新規性
・従来技術の待受け擁壁は、剛な構造であり崩壊土砂の衝撃力に対し、その重量と形状により抵抗するため構造が大きくなる。インパクトバリアは柔構造であり、崩壊土砂の運動エネルギーを吸収しながら捕捉するため、各部材に発生する応力を小さくできることから、柵全体を軽量化できる。
・ネットは、強度の高い硬鋼線を巻き束ねたリングであり、変形は許容するも衝撃力に対する抵抗力は非常に高い。
・ネットから、ワイヤロープを介して伝達される衝撃力は、衝撃力緩和装置であるブレーキリングにより、支柱やアンカーへの作用力を低減する。
・標準的にはポケット部を除き斜面の改変がほとんど発生しない。
期待される効果
1.土砂災害防止法の施工に伴う構造規定に対応する待受け擁壁の設計にあたり、次のような課題点が生じる場合でも、インパクトバリアは、その制約を受けることが少なく設置が可能である。
・斜面尻の切土が必要となり、同時に多量の樹木を伐採するケース。
・切土に伴い、斜面の安定対策が別途必要となるケース。
・保全対象物への距離が少なく、周辺環境への影響が大きいケース。
2.待受け擁壁に比べ、CO2排出量を大きく低減できる。(躯体製造時のCO2排出量の比率が10~15%減)
3.工事による土地の改変が小さいため、周辺の土地利用への影響が小さい。
4.工種が少ないため、工期を大幅に短縮できる。そのため、斜面災害現場への応急対策工としても適用できる。
5.実物大実験とそれを踏まえた動的シミュレーションにより設計の信頼性を確保している。
適用条件
1.斜面崩壊土砂の移動の力(Fsm)が150kN/m2以内の条件。
2.斜面の最大崩壊深が概ね2m以下(崩壊土砂の移動の高さが1m以下)予測される斜面。
3.所定の土砂捕捉容量が確保できる地形。
4.待受け擁壁の適用が困難な箇所(民家等が近接しており、切土により大規模な斜面安定工が必要となる箇所等)
5.立木の伐採に制約がある、または、伐採を最小限度に抑える必要がある箇所。
6.近隣の自然環境に調和し、景観に配慮することが必要な箇所。
7.斜面崩壊が発生した箇所の応急対策等で短期間施工が必要な場合。
8.擁壁支持地盤の地耐力等が不足するため基礎対策を必要とする箇所。